御礼

□君の隣で
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あの甘味処での逢瀬から一月程が経った。

時々稽古が休みなのか門前を通らない日もあるが、それでも月の大半は擦れ違い二、三、言葉を交わしては別れるのが常で。

一度だけ甘味処の後に新橋の方へ足を伸ばして二人で出掛けた事があったがそれも半月も前の事になる。

会いたいなぁと思ってしまうのは昨日の一言の所為か…。

『明日は稽古が休みなので友達とお芝居を見に行くんです』

嬉しそうな顔に此方まで笑顔になってしまったが、よくよく考えて見れば会えないと言う事だ。
自分勝手なのは分かっているがこんな気持ちなのは自分一人かと思うと自然、溜息の数も増えた。

「はぁ…」

箒の柄に掛けた手の甲に顎を乗せて溜息を吐く。早く明日になればいいのにと。





「…どうしたんでェ、剣心は」

「さあ…?」

物思いに耽る剣心を左之、薫、弥彦が其々に見ているが当の本人は全く気付いていない。

「はぁ…」





「あ、また…」

「あれだ、分かったぜ!恋煩いだ!」

得意気に言った弥彦に薫の拳骨が見舞われピヨピヨと目を回している。
それを呆れた顔で見つつ左之はふむ、と腕を組んで顎に手を掛けた。

「弥彦の言い分も強ち間違いじゃねェかもな」

「え!?嘘!!」

剣心に淡い恋心を持つ薫としては気が気じゃない。

「確かめてみようぜ」

ニッと笑った左之は悪戯を思い付いた子どもの様な顔をしていた。





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