御礼

□君の名を
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神谷道場に居候し始めて数日。
気付いた事がある。

毎日同じ時間の昼過ぎと夕方の二回、必ず神谷道場の前を通る人がいる。

初めに気になったのはその持ち物。
細い筒状の袋に入ったそれは竹刀や刀よりも長く、弓か何かだろうと容易に想像がついた。

薫殿の様に武術を心得ているのだろう。

その時はそんな感想で終わったが次に気になったのは…。


「おろ、そろそろ時間でござるな…」


日課の庭掃きの途中、毎日彼女の通る時間になると何となく門前を掃き始めてしまう。

そうして彼女が通り過ぎる様を横目で見つつ家事に勤しむフリをした。

そうして数日、未だ彼女の顔を見た事が無い。

人間見えないモノほど見たいと思うモノで今では半ば意地の様なものだ。

大して無い落ち葉を集めてみたり草を抜いたりしながら時間を潰していれば静かな足音と人の気配を背後に感じて意味も無く緊張してしまう。


「(今日こそは…)」




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