偶然は必然に奇跡を起こす(仮完)
□人と傷と
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あの日から、薫さんとは気まずくて余り話していない。
目が合えば顔を赤くして反らされるし、目が合っていなければ睨まれる。
薫さんも剣心さんを好きなのだろうと、今更に気付いた。
そりゃ、睨まれもするよね…。
後から出会った私が剣心の恋人になっちゃったら、逆の立場なら私だって面白くないだろう。
はあ、と盛大に溜息を吐いて行き交う人を眺めた。
ここは最近良く来るになった甘味処。薫さんの家じゃ、一人になるって中々ないから時たまフラリと出歩いてはここに来る。
誰にも言ってないから帰ると何処に行っていたのか剣心さんにしつこく聞かれるけれど、言えば着いて来そうだから言ってない。
頼んだ物も食べ終わってしまったし、そろそろ場所を移動しようとお店を出た時だった。
ドン!と何かにぶつかって、あ、倒れると思ったが咄嗟に腕を掴んでくれた相手によってそれは免れた。
が…、なんだこりゃ。
腕を掴まれたのは解るけど、なんで相手に抱き込まれてんの…。
顔を上げてみれば相手の背の高さに驚いて固まった。
「大丈夫でしたか?すいません、こちらの不注意で」
そうにこやかに言った警察の人は、
「狼…」
みたい。
瞬間、掴まれていた腕に力が篭って気付けば裏路地に連れ込まれていた。
「小娘、誰にそれを聞いた」
細い目で鋭く睨みつけるその人になんの事かと首を傾げた。
「てゆうか腕痛い…」
不機嫌丸出しでボソッと呟けば腕は離して貰えたが、変わりに両腕を壁に着いて閉じ込められた。
どうしよう…。面倒臭いなぁ…。
「りの!!」
ううん、と悩んでいれば、現れたのは逃げて来た相手の一人。
「剣心さん…」
「斎藤!りのを離すでござるよ」
斎藤と呼んだ相手を鋭い眼つきで睨みつける剣心さんがちょっとかっこいい。危機的状況じゃないから思えるのか。
「なんだ、抜刀斎の知り合いか」
壁に着いた手を離した斎藤さんは剣心さんに向き直って煙草に火をつけた。
その隙にささっと剣心さんの隣に移動してじっと観察してみる。
前髪が触角かダウジングのやつみたい。
目が細すぎる。顔も細い。足も細い。つか足細ッ!!
「りの、一体何処に居たでござるか」
「……………」
剣心が話しかけて来たけれど、目の前の警察から目が離せずじっと見つめていた。