偶然は必然に奇跡を起こす(仮完)
□柔らかな
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着物を着付けて髪に櫛を通して、首筋に香水をつける。
鏡の前に座って、自分の顔を覗き込んだ。顔自体は何も変わらない、けれど、何処か違う気がする…。
というより痕が凄い…。喉のど真ん中にくっきりと歯型が残っているし、首筋にも痕が沢山ある。着物で隠れてはいるけれど、それは胸元にもお腹にも、果ては太腿の内側にもあった。動く度に感じる下腹部の痛みと疼き。何処となく腫れてる様な気がするヒリヒリした陰核に、頬を染めてメイクに取り掛かる。
今日の朝は全て緋村さんが済ませてくれた。
日課になった食事の用意すら。
不意に手を止めて吐いた溜息は甘い。色んな意味で、女になったと実感した……。
処女を失くした事で、少女から大人の女性へ、好きな人の腕に抱かれる事を知った幸福、そして、緋村さんの…女になったんだと…。
朱の差す頬に、チークは要らなそう…と笑って簡単にメイクを済ませた。
「りの殿、開けても大丈夫でござるか?」
襖の向こうから甘く聞こえる声に自然と口角が上がる。
「はい、大丈夫ですよ」
一拍置いて開いた襖に振り向けば、蕩ける様な笑みを浮かべた緋村さんがいた。
「その、身体は…大丈夫かと…。頂き物の菓子があるから食べぬか?そろそろ薫殿と弥彦の稽古も終わる頃でござろう」
「じゃあ、居間に行きましょうか………ぁっ!」
そう言って立ち上がろうと腰を上げた時。
トロッ、と太腿を伝うナニカにびくりと肩を揺らして畳に手を着いた。
「りの殿!?やはりまだ何処か痛むのか?」
慌てて側に来た緋村さんが、肩に手を添えて支えてくれたがそれどころじゃない。
何だコレは………。
「……いえ…、そうじゃないんだけど、なんか…」
出てきた。不思議に思って首を傾げていると、そのナニカに思い当たる節があるのか緋村さんは、ハッとして頬を染めた。
「すまぬ…。多分、拙者の…かと…」
言い難そうに頭を掻いている緋村さんの言葉の意味に、全く要領を得なくて更に首を傾げた。
「緋村さん、の?」
何?と見上げるとサッと目を反らされた。
「え…、だから、拙者が…中に出した欲かと…」
段々と、小さくなっていく声に、それでも聞こえたその意味に、頭が沸騰した。
「あ、そ…、なんです…か…。そっか、そっか…ああ、うん」
自分でも何を言っているのか訳が解らない。