偶然は必然に奇跡を起こす(仮完)
□深層心理
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とりあえずで猪口を持って来るとりの殿が何か摘むモノでも、と席を立った隙に左之に詰め寄った。
「左之、どういうつもりでござる」
「あ?どういうつもりってお前ェ、別にどういうつもりもねェけどな」
「そんな訳ないでござろう、こんな夜分に態々りの殿に酒を持って来るなど…」
「なんでェ、剣心…やけに口煩ェな。お前ェにゃ嬢ちゃんがいるだろ?」
「左之!冗談でもそんな事は…」
からかい口調でそう言った左之にこちらも口調は厳しくなる。
そこへ戻って来たりの殿はキョトンとして小首を傾げた。
「どうかなさったんですか?」
「ちっと剣心がな、まあ気にすんなって、呑もうぜ」
そう言って酒を傾ける左之にりの殿は猪口を持って慌ててそれを受けた。
「私、日本酒って呑んだ事ないんですけど…」
ペロッと酒を舐めたりの殿は匂いに顔を顰めたが、口当たりが良かったのだろう、次の瞬間にはおや、と眉を跳ね上げた。
「へぇ、意外と飲みやすいかも…」
そう言いつつ猪口を置くと酒を手に拙者へと進めて来た。
「緋村さんも呑まれるんですよね?どうぞ」
「っとと、忝い」
注いで貰った酒をクイッと傾ければじっと見つめる瞳に気付いて視線を投げた。
「なんか、大人って感じ…」
その感想に首を傾げながらも、もう一杯注がれたそれを舐めた。
左之にも注いでいたが、感想は…。
「同じ飲み方なのにただの酒飲みにしか見えないのはなんでだ」
だった。それには流石に左之も抗議の声を上げていたが、何と無く左之との扱いが違う事に優越感を感じてしまう。