偶然は必然に奇跡を起こす(仮完)

□夢の道標
1ページ/6ページ

刃衛の闘いから数日、あの時の事は私の勘違いかと思う程、緋村さんは特に何も言ってこなかった。

そっと自分の唇に触れてみる。あの気を失う瞬間、確かに温かかったのに…。

「りのさん?どうかしたの?」

縁側で一人ぼーっとしているトコロに薫さんが来た。
物思いに耽っていたせいか、悩んでいる顔にでも見えたのだろう。
実際悩んではいるけれど…。

「薫さん…。どうもしないよ、いい天気だからぼーっとしちゃって」

まだ春にはならない季節だけれど、今日は本当に暖かい。

「そう、ならいいんだけど…。あ、私と弥彦は今から出稽古だからお昼は剣心と二人分で大丈夫だから!まあタダ飯喰らいが来るかもだけどね」

呆れた様に、それでも何処か嬉しそうに言った薫さんに私もクスリと笑い返した。

「じゃあ少し多めにしなければ、だね」

「薫ー!さっさとしろよ!」

「今行くってば!じゃあ後はよろしくね」

二人で相楽さんの事を話していると、出稽古の用意が出来たのか弥彦君が玄関から薫さんを呼んでいる。

「いってらっしゃい、気を付けてね!」

ニコリと笑って手を振った薫さんを見送ってまたぼーっと庭を見た。

洗濯は乾くまで待つだけだし、掃除も終わっている。
お昼の用意には早いし、緋村さんは買い物に行っていていない。
完全に一人、暖かな日差し、静か。と、なれば眠くなるのも自然の摂理とでも言おうか。

何時の間にか縁側で眠ってしまった。


目が覚めたのは日差しとは別の温かさを感じたから。
完全に眠っていた訳では無いのだろう。明るかった瞼の向こうに影が差したと思った時に唇に触れた温もりが離れて行くと同時に瞼を開いた。

瞼を開いて最初、縁側に横になって眠っていた私の視線は真っ直ぐ庭先へ。それから直ぐに影の原因となった上へと顔を向けると耳まで真っ赤にして口元に手の甲を当ててオタオタする緋村さんが居た。


「「……………」」



何してるんだろう…?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ