時を越えて(完)
□じゅう
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葵屋を出て三日。
狼煙が上がったのを確認すると翁の元へと向かい比古清十郎の所在を教えて貰いその山へと入る。
暫く歩き山中の拓けた場所に出れば窯の前に座る見覚えのある後姿・・・
を、いきなり抜刀し斬りつける剣心。
「一介の陶芸家にいきなり斬りつけるとは随分無粋な輩だな」
それを大きく飛躍して避けた男は振り返り剣心を見た。
「"比古清十郎"は一介の陶芸家ではないでしょう…」
「…なんだ、お前か…」
「お久しぶりです、師匠…」
「ん?おお!久しぶりだなあ!どうした、何年振りだ?」
「師匠…?」
比古清十郎では有りえない歓迎振りと急に変わった態度に剣心は怪訝な顔をするが、近寄って来た比古が話し掛けていたのは…
「お久しぶりです、清十郎さん」
ニコッと笑みを浮かべたりのだった。
「なんだ、俺が恋しくなったのか?りのもまだまだ子供だなあ」
「え?ちょっと待つでござる、りの!師匠とは知り合いなのか?」
「うん、私に剣の理を教えてくれた人」
りのがそういえば剣心はポカンと口を開けて驚いているのに対し比古はりのの肩を抱いて家へと入ろうとしていた。
「ちょっ、ちょっと待って下さい!」
剣心は比古の手を払ってりのを引き寄せる。
「心の狭い男だな。五年近くも一緒に暮らしてたんだ、今更だろう」
「一緒に暮らしてたって…!」
「もう!清十郎さんもからかわないで下さい、結構単純なんだから」
「りの…;酷いでござる」
「まあいい、兎に角家に入れ」