時を越えて(完)

□きゅう
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「…剣を取れ、志々雄真実」




「(なんかよくわからないけど…すごい事になってる。これは…あたし達が手をだせる雰囲気じゃないわ)」

「だったらコソコソしてないで堂々と見物しな」

「側を離れない事が条件だけどね」

剣心が志々雄と対峙している後ろでは 襖の影から覗く操達を斎藤が中へと入れていた。

「今の龍翔閃とかいう技、刀の腹で尖角のアゴを打ち上げたわけだが恐らく 本来は刃を立てて斬り上げる技だろ?がっかりしたぜ。先輩が人斬りを止めて不殺の流浪人になったとは部下の報告で聞いていた、が この目で直に見るまではちょいと信じ難がった。蓮は別としてもそんなんで俺を倒そうなんて100年早え、つまらねえ闘いはしたくねえ」

志々雄が指を鳴らすと傍に控えていた女が後ろの屏風を畳む。

「京都で待っていてやるから人斬りに戻ってから出直して来な」

「尻尾を巻いて逃げるのか」

隣に立て掛けてあった刀を掴むと志々雄はそれを剣心の方に向かって投げ、頭だけを動かし避けた剣心の後ろにいた青年が受け取った。

「宗次郎、俺のかわりに遊んでやれ」

「いいんですか?」

「ああ"龍翔閃"とやらの例にお前の"天剣"を見せてやれ」

そういうと志々雄は女と共に屏風の後ろに隠れていた階段を降りて行った。

「じゃあ遠慮なく」




剣心と宗次郎と呼ばれた青年が対峙する中、互いの出方を伺っていると焦れた操が怒鳴った、と同時に剣気を放つ剣心に操が腰を抜かす。

「無駄だ、そいつに剣気をたたき続けても暖簾に腕押しだ。さっきから俺が ずっとやってる。その男は剣気はおろか殺気も闘気も持ち合わせちゃいねェんだ」


「(瀬田宗次郎…)」
確か歴史書にあった。


"喜怒哀楽"のうち"楽"以外の感情が欠落し
"喜"の感情がないから"闘気"がなく
"怒"の感情がないから"殺気"もない

一流の剣客であるほど相手の攻撃的な気を読んで行動するが 彼にその手は通用しない。

現に ずっと一が志々雄に攻撃しようとうかがっていた様だが、横にいた宗次郎の出方が読めず攻撃し損じた。

相手の心理を即座に読む剣心の飛天御剣流なら尚更ーーー

「すいません、早くしないと志々雄さんに追いつけなくなっちゃうんですけど…」

笑顔のままではあるが、何処となく困った様に宗次郎が言えば剣心は納刀し構える。
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