時を越えて(完)
□なな
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神谷道場からある程度離れた時、後ろから斎藤が現れた。
「やっと 京都へ行く決心がついたか。神谷の娘に別れは言って来たか」
(やっぱり斎藤も薫が剣心にとって特別だって分かってるのかな…)
僅かに影を落としたりのの瞳に剣心が気付いて斎藤を睨みつけた。
「すまん 失言だった 。これからは志々雄一派と共に闘う同志なんだ。仲良くやろうぜ」
「共に闘う?」
「ああ 大久保暗殺の余波で川路の旦那に色々と雑用がふえちまってな、京都での現場指揮は俺が執る事になった…なんだそのものすごく嫌そうな顔は」
斎藤の話を聞く分には、京都でも行動が一緒になりそうで 思わず目が据わり眉間に皺まで寄ったままものすごく嫌そうな顔で揃って
「「別に」」
と返してやった。
「とにかくついて来い。今から横浜へ行けば朝一番の大阪行きの船に間に合う」
踵を返し そう言った斎藤に剣心は いや、と断わる。
「拙者達は東海道を行く」
「なんだ文無しか?船代ならちゃんと政府でーーー」
「そんなのではござらん!」
文無し…文無し?剣心お金持ってたっけ?とりのは剣心を見るがサラリと流された。
「大久保卿暗殺の件を見てのとおり志々雄一派は神出鬼没の連中だ。船上でいきなり急襲してくる事も充分考えられる、逃げ場のない船上の闘いとなれば何も知らない人々を巻き込みかねん」
おお、ちゃんと考えてるんだね、剣心。
「…考え方は相変わらず"流浪人"か。平和ボケもたいがいにして早いうちに"人斬り"に戻った方が身のためだぞ。なんならもう一度 ここで闘っておくか」
斎藤が刀の柄に手をかけると剣心も抜刀の構えを取った。
血の気が多いね…
「はいはい、お二人さん、落ち着いて」
「…お前との闘いにはいつでも応じてやる、だが拙者は これ以上抜刀斎に戻る気はない。この一件に誰一人 巻き込む気もない。そのために拙者達は"二人"を選んだ」
「………まあいい、どの道を選ぼうが京都に至れば問題ない。常人なら十日前後の道のりだか、お前等なら五日もあれば充分だろう」
私一人なら走って三日かからないかも。とは言わなかった。
斎藤は刀から手を離し、忠告をして去って行く。
「だが 物見遊山は程々にしておけ、志々雄は全国に蜘蛛の糸の様な情報収集の網を張っている。お前の行動は 全てお見通しのはず。忘れるな 志々雄との闘いは既に始まっているーーー」