短編〜中編
□望むままに
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「ねえ、剣心!買物行こう、お買物!!」
「おろ、買物でござるか?」
「うんっ!」
剣心を誘って町に出て、彼是店をひやかしながら歩いて着いたのは小間物屋。
「こっちと、こっち、剣心ならどっちがいい?」
緋色と水色、二色のリボンを手に取って剣心を降り仰ぐとニコリと笑った剣心は緋色を指差した。
「 りのは元気がいいからこっちのが似合うでござるよ」
「えへへ…、そうかな。じゃあこっちの緋色にしよ」
色を決めてお勘定をしようとしたら、剣心に止められた。
「どうしたの?」
「いいから、ご主人幾らでござるか」
私を制した剣心は懐から財布を出してお勘定していた。
「え、待って、自分で買うよ?」
「高いモノは買ってやれぬがこれくらいなら…」
そう言ってお勘定を済ませた剣心は、その緋色のリボンを着けてくれた。
「……ありがとう。大事にするね!」
嬉しくて、満面の笑顔でそう言うと剣心も笑って頷いてくれた。
次に向かったのは甘味処。
二人で店先で餡蜜を食べて他愛ない話をした。
いつもは薫さんや弥彦、左之助も一緒だから二人きりが嬉しくて。
はしゃぎ過ぎて転びそうになった私を抱き留めてくれた剣心に頬が熱くなる。
「 りのは危なっかしいでござるな」
クスリと微笑って、手を繋いで歩く。
一歩先を歩く剣心の背中を見て、繋がれた手を見て、恥ずかしいけど、嬉しくて…。
照れて俯いた私をチラッと見た剣心が目を細めて愛おしそうに微笑ったのを、私は知らなかった。