短編〜中編
□愛のカタチ
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幕末
愛する人を斬りましたーー
訳あって新撰組の沖田総司に拾われて女中として働く様になって三ヶ月。
何が切っ掛けだったか、局長の目に留まり剣術を習って七ヶ月。
当時十と四だった私は十と五になり愛を知った。
けれどその人は…
沖「 りの…、君を置いていく事になると分かっていながら傍に居てくれなんて、酷い事をしているのは分かっているんです…。それでもどうか、最期だけは愛する人に見送られたい。戦場を駆ける事も出来なくなった今、僕には貴女だけだから…」
だからどうか、最期は貴女の手で…
そう言って日毎、動く事もままならなくなってゆく貴方を見ていた。
無力な私はそれを唯々見ているだけ。
何をしてあげれるのか、考えたけれど、何もしてあげれなくて
最期の日、貴方の刀で貴方の心を貫いた。
涙を止める事の出来ない私に、笑ってこう言った。
「 りの、笑って…僕は幸せだったから…」
本当に?
ねえ、総司さん…
幸せだった?
享年二四歳
私が一六の祝言から一年後の五月
愛する人はこの世を去った
夏を迎えようとしている空は蒼く澄み渡っていた。