物語りの終は
□九幕
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「じゃあ、いってきますね。後よろしくお願いします」
「気を付けるでござるよ」
「りの姉!帰りは何時頃?」
「そうねえ、夕方には戻れると思うんだけど遅くなるようなら先にお夕飯食べててね」
薫の事だ、りのが帰るまで待つと言い出しかねないと踏んだりのは薫にそう告げるとニコリと笑って道場を後にした。
りのは今日、大久保利通に呼び出されていた。
それは誰にも伝えていない事だが…否、寧ろ言える筈も無い。
山県卿の事は仕方ないと諦めもしたが大久保利通まで繋がってるとなれば薫は勿論、剣心も良い顔をしない様な気がしたからだ。
だがこの時りのはこの大久保利通との密会が今後を左右するなど思いもしていなかった…。
暫く歩いて町の人通りの少ない場所まで着くと既に迎えの馬車が停車していた。
近付けばス、と扉が開いて中からは迎えの者だろう男が降りて来てりのを中へと促す。
頷き一つで返して中に入るとオトコもまた向かいに座り合図と共に馬車はゆっくりと走り出した。
その頃神谷道場ではりのの留守中、薫も張り合いがないのかのんびりとお茶を啜り、書物を読んでいたがそれは弥彦と剣心も同じだった。
「来客でござる」
が、そんなのんびりとした雰囲気に水を指す気配に剣心はピクッと反応した。
「「え?」」
「ちょ、ちょっと剣心。何どうしたの?」
湯呑みを置いて立ち上がると真っ直ぐに玄関へと向かう剣心に薫と弥彦は慌てて着いて行く。
「気を感じたでござるよ。全く隠そうとしない、バカ正直な闘気」
ガラッと戸を開けると逆光の中門の所に一人の男が立っていた。
「喧嘩、しに来たぜ」
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