物語りの終は

□七幕
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その日は剣心が出掛けていて道場には薫、弥彦、りのの三人がいた。

薫と弥彦はどちらも気丈で寄れば口喧嘩が耐えなかったがりのは全く気にした風も無くニコニコと弥彦の頭を撫でるだけ。

弥彦はそれに子ども扱いするなと怒りつつ顔は真っ赤で満更でもなさそう…なのが薫の癇に障る。

薫自身十五になるかならないかの頃までは良く頭を撫でて貰っていたのだ。今は無いそれは薫が一端の女になったと認めたりのの想い故なのは薫にも解っている。





解ってはいる…………が、己にだけ向けられていたその手が盗られてしまったみたいで面白くは無い。

そうしてまた口喧嘩、それから取っ組み合いへと発展するのだが果たしてりのがそれに気付いているのかいないのか、ただニコニコとするりのを見て剣心は苦笑いしたのが二日前。




りのは井戸の側で洗い物をしていて薫は稽古をサボった弥彦を探している。


「ったくもう、二日目で早くもサボるなんて。口が悪くてヒネくれてて根性なしなんて…剣心、いったいあのコの何処を見込んだ…か?」

言い終わるか否か、薫の後頭部に竹刀が綺麗に突っ込んだ。

「黙って聞いてりゃ好き放題ぬかしやがって、ブス小娘に教わる位なら我流の方がマシだと決めたんだ、この!大体お前人に教える程強いのかよ?」

屋根の上にいる弥彦に気付いていたりのはあえて黙っていたのだが流石に口元を押さえて驚いた顔をしている。

が、それも一瞬の事で見る間に目を釣り上げると薫が何か言う前に弥彦の竹刀を拾い庭に降りた弥彦の頭を引っ叩いた。

「いって!何すんだよ、りの!!」

「謝んなさい!」

「な!ブス小娘も我流の方がマシなのも本当の…」

「女の人に竹刀ぶつけるなんて!試合中でも何でも無いのよ、どんな理由があっても女の人に暴力なんてダメよ!!謝んなさい」

「「(え、そこ!?)」」


怒るりのに微妙な顔をする二人。りのには何故薫まで微妙な顔をしているのか疑問ではあったが今は弥彦が謝る事の方が先だと決めた。

「…いっつも取っ組み合いしてたって怒んねェじゃん…」

ムスッとした弥彦は謝るのが癪なのか外方を向いてしまった。
素直に謝るのが嫌な年頃なのは解っている。
りのは弥彦の前でしゃがむとニコリと笑う。

「そうね、いつもは"薫と弥彦が"取っ組み合いをしてるから何も言わないわ。でも一方的なのはダメよ」

ハッとして弥彦がりのを見るが本人はニコニコしたまま。

気に入らなくとも謝った方がこの場は得策だが癪に障るから謝れない。そうして弥彦が逡巡している時だった。





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