物語りの終は

□四幕
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道場には三人。

薫、喜兵衛、りの…。

そして喜兵衛の手には神谷家の土地の権利書が握られている。

やはり調べた通りの男であった喜兵衛にりのは深い溜息を吐いた。

そして比留間五兵衛が下っ端を連れての登場。





ただ…、緋村剣心は現れなかった。

「(人斬り抜刀斎と知れてたんだ…。こなくて当たり前か)」

過去を隠して流れる身ならば仕方ないと道場の床の間に飾ってある真剣、の更に後ろに隠す様に置いてあった自分の刀を手にした時、それは起こった。



「流浪人!」

薫の声にハッと顔を上げると私と薫の前に立ちはだかる緋色の後姿。

「…………緋村、さ…」

来て、くれた…。


刀はそれなりに扱えると自負している。
けれどそれは己が身を守る為の完全なる殺人剣だ。

この神谷道場で振るうべき剣では無い。
だからこそ此処で世話になってから封印していたのだ。

だがそれも薫を守る為なら仕方ないと取ろうとした…。
それを、取らずにおかせてくれるのか。

きゅっ、と下唇を噛み締めた。

振り向いた緋色の彼にやはり疑似感に囚われて一瞬息が詰まる。

「遅れてすまぬ」

大事ないか、とフワリと笑った緋村さんにどうにも泣きたくなった。


「はい…、はい!薫も私も」






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