物語りの終は

□一幕
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「あら、あらあら!随分別嬪さんになってまぁ!!」

「ふふ…、相変わらず上手ですね」

明治5年、あの日から凡そ十五年の月日が流れた。

「お世辞じゃないわよ、本当、綺麗になったわ」

「ありがとうございます」

あの人は、まだ迎えには来てくれない…。

「りのちゃんももう年頃だし誰ぞ好い人でもいるのかしら?」

「……、そう、ですね…。待ってる人がいます」

後どれだけ待てばいい?

「あらぁ、今時待ってるなんて純情ねえ」

「そうですか?」

「そうよ!迎えに行くくらいじゃなきゃ」

育ての親の兄妹である叔母の話に苦笑いが零れた。

「ま、こんな時間?帰って夕餉の仕度をしなきゃ!それじゃあまたね」

「気を付けて」

手を振りながら帰って行った叔母を見送り溜息を一つ。

「待ってるだけじゃ、ダメ…か」







幼い頃、本当の両親は夜盗に襲われ他界した。
私は人買いに売られて5歳の時に他の地へ。

その時に出会った男の子の言葉を今でも鵜呑みにして待っているのは可笑しな事だろうか…。

私を人買いから助けて育ての親に預けてくれた人はぼんやりとだけど覚えている。








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