短編〜中編

□望むままに
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夕暮れの川沿いを並んで歩く。

緋色の夕焼けが、剣心の髪と、私のリボンと同調してキラキラ輝いて見えた。

剣心が、好き。

はっきりと伝えた事はないけれど、私なりに頑張って行動で示してきたつもりだった。

剣心は、どう思っているんだろう…。
同じ感情を持ってくれているのか、それとも妹みたいな存在?

聞いてみたいけど、私らしくないけど、怖くて聞けない。

もしも妹みたいだと言われたら流石の私でも、その場で泣いてしまいそうだから…。
そんな、剣心を困らせる事、したくない。

いつも考え過ぎる剣心に、少しでも心が軽くなればと明るく振舞っているけれど、本当の私は酷く臆病者だ。

はっきり答えを聞く事が、怖くて仕方ないのだから。

不意に足を止めた剣心に、不思議に思って顔を上げると緋色を浴びてキラキラと輝く水面を見つめる剣心に、見惚れてしまった。

綺麗…。

剣心は、優しいだけじゃない。優柔不断な面もあるけど、真っ直ぐに人を見る。
ちゃんと、その人を見て向き合ってくれる。
それに、身長は確かに小さいけれど、そんなの気になら無いくらい格好良い。
綺麗な緋色の髪に陽に焼け辛いのか色白で、目も切れ長だけど二重で大きくて…。細いけれど筋肉はしっかり着いていて、さっき抱き留められた時に、その胸板の厚さにドキドキした。

私一人くらい軽々と持ち上げてくれるその男らしさにもドキドキする。

剣心に惹かれる人は多い…。
何も私だけが特別な訳じゃない。
誰にでも優しいし、特に女性や子供に優しいから、余計惹かれるひとが多いのだろう…。

本当は、好きって伝えたい。
けど、関係が変わってしまうならこのままでもいい…。

「どうしたのでござる… りの」

「え…?何が?」

掛けられた言葉の意味を図り兼ねて首を傾げると、剣心も首を傾げた。
二人して同じ格好をしている事に思わず笑ってしまう。

「おろ…元に戻った」

「だから、何が?」

「なんだか、いつもと様子が違った故…」

ドキッと心臓が跳ねた。
一瞬の考え事を、剣心は見抜いたのだろうか…。

「そんな事…ないよ」
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