偶然は必然に奇跡を起こす(仮完)
□懐包終夏焉
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「なんでござるか、アレは…」
「ん…?良くなかった…?」
「いや、逆でござる。癖になったら不味いなあ…」
放心状態でグッタリと横になって目を閉じたまま呟くと拙者の上で寝そべるりのが前に居た時代でねっととか言うモノで読んだのを試したのだと言う。
拙者もそのねっとが見たい…。
どうやらりのも死ぬ程気持ち良いらしい。途中頭が真っ白で何も覚えていないと言っていた。
流石にドロドロ過ぎてこのままでは明日の朝、処理が大変だと気怠い体を引きずって二人で湯に浸かってから抱き合って眠った。
布団は二組要らないと思うでござる。
朝には昨日の厭らしさは成りを潜めたりのの笑顔で起こされた。
「おはよう!良い天気だよ。今日も山へ行くの?」
「いや、今日はこの前取ってきた薬草を磨るでござる」
居間に行くと朝餉が用意されていて、二人でそれを食べているとそろそろ終わろうかと言う時、見知った気配に何事かと顔を上げて玄関の方を見た。
「どうしたの?」
「左之…、でござるかな」
「え?あ、お客さん」
玄関先で戸を叩いてオーイ、と叫ぶ声にりのが腰を上げてそちらに出向く。
暫くすると案の定、左之と薫殿も一緒に居間へと来た。
「剣心、相楽さんと薫さん。今お茶淹れるね、座って待ってて?」
自分の分の食器を纏めて厨に行ったりのを見送って左之と薫殿が座る。
「よお、元気だったか?」
「久しぶりね、剣心」
「元気でござるよ。左之と薫殿も変わりない様で何より」
途中だった食事を終わらせてりのが運んで来た茶を飲みながら二人に向き合う。
その隣ではりのが拙者の食器を片付けていて、それを見た二人が微妙な顔をした。
「なんか…剣心が立派な主人に見えるわ…」
「オウ…。当たり前の様にりのに片付けさせてる辺りがなんかしっくりこねェ…」
「おろ…。そうは言われても…、拙者も普段は手伝って…いないなぁ、最近」
言われてみれば最近は身の回りの事は全てりのがしてしまう。
気が付くと終わってるので特に気にしていなかったが…。
「いいの、私がしたくてしてるんだから…。それより二人共どうしたの?」
厨から戻ったりのが苦笑いしながら拙者の隣に座る。
確かにりのは金を稼ぐ仕事はしていない。けど任せきりもなんだかなあと思いながらもりのの言葉に二人を見ると、さっきまでとは違って何と無く思い悩んだ顔をしていた。
夏ももうすぐ終わりそうな季節。物悲しく郷愁に駆られる思いとは裏腹に、二人は小さな嵐を連れて来た。