SS集
□祈り
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[issueさまからお借りしています。]
雨が好き。
たった一人だけ、そう言った彼女は。
――風はすり抜けてしまうし、
雲ばかりだと不安になる。
雷とか霧は少し怖くて、
太陽はわたしには明るすぎて苦手。
だからわたしは、雨が好きだな。
理由を問うと、
ためらいがちに答えてくれた。
その時言った、「好き」に、
勘違いしてしまいそうなくらい嬉しくて。
(違う、違う。俺じゃない)
「雨の音ってさ、ほら、
なんか落ち着くじゃない?」
山本くんに、似てるかも。
そんな小さな呟き、それは、
誰も見てはくれなかった自身を
見透かされた気がした。
pray 祈り
-でもそれが、救いの手に見えて-