SS集
□君は僕に似ている
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『どうして泣いているの?
君は……人魚なの?』
思い出すのはいつも同じ、あの頃の記憶。
俺はずっと、あの頃から止まったままだ。
「さ、えき、くん。」
「人魚と青年は、どうなったと思う?」
彼女は夕暮れの教室でひとりだった。
その姿はあの少女のようで、
思わずそんな問い掛けをしてしまう。
あの子じゃないって事は、
痛いほどよくわかってるのに。
「ごめん。忘れ「人魚って、」」
「人魚って、この町の伝説の、よね。」
訂正しようとした俺の声に、
被せるように彼女は言った。
真っ直ぐに俺を見つめた彼女。
ふ、とその目をみると、
彼女も自分と同じだと感じた。
「幸せになったに、決まってる。」
彼女は、真っ赤になった目でそう言った。
君は僕に似ている
-こっちは幸せになれなかった二人、か-