SS集

□エゴイズム
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[issueさまからお借りしています。]


「婚約おめでとう、鏡夜。」

部室に入るなり、そう一言。
まだ部活が始まらない時間だが、
彼はいるだろうと踏んでのことだ。
伊達に長年腐れ縁を続けてはいない。

「嫌味のつもりか、それは。」
「いいえ。心からそう思っているわ。」

嘆息して眼鏡をかけ直す彼に、
私は今まで生きた中で
最も美しくできた笑顔をみせる。

「あれは違うと言った。」
「そう。それが何か?」
「愛してるのはお前だけだ。」

彼の言葉に笑いが込み上げる。
どうせ彼のことだ。
他の女にも言っているに決まってる。

「ずっと不思議だったの。
何故、貴方が私を選んだのか。」

そう言い残し、
私はもと来た扉に手をかける。
知ってる。彼は誰も追いかけない。
だから、これでお別れだ。


「俺の世界にいた女が、
お前一人だったからだ。」
「……?」
「理由、聞きたかったんだろう?」



[エゴイズム]
-ああ、なんて酷いひと-




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