CROSS

□sacrifice
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下手したら、あの白海のエビよりも速いかもしれない速度に、振り落とされないよう手摺に掴まる。

「どこかへ連れてく気だ、俺達を!!おい!!全員船から飛び下りろ!!まだ間に合う!!」

「だって船は!?船持っていかれたら」

「心配すんな!!俺が残る!!」

飛び起きたらしいロロノアが怒鳴るが、どうやら先手を打たれているらしい。
大型の空魚が、エビによって運ばれるメリー号を追い掛けてきている様を見て、飛び込むのは無駄だと悟る。

「はっ、用意周到なこって……どうやら、もう始まってるらしいな」

「『天の裁き』か……追っ手を出すんじゃなく、俺達を呼びよせようってわけだな。横着なヤローだ」

ロロノアのぼやきに、ナミが顔を青ざめる。
恐らく、状況は最悪。
ルフィとサンジ、長っ鼻の3人と俺達は引き離され、これからのことが互いに判らない。
それでも、あいつら3人はコニス達にこれから成すべきことを聞けるだろうが、俺達はどうしようもない。




それにしても、何かが引っ掛かている。
そもそも、俺達が不法入国者だと認識されたのは白海の天国の門だったが、天の裁きとやらの第2級犯罪者と確定したのはエンジェルビーチだ。
俺達の罪が確定してから、アッパーヤードに導かれるまでの時間が、あまりに短すぎるような気がする。
もちろん、あのホワイトベレーとか言う連中が電電虫でも使えばおかしくはないが、俺の気のせいでなければ連中はあれからずっとビーチに隠れていた。
話し声がすれば俺には判るし、妙な動きをすれば即座に息の根を止められるよう、動きにも警戒していた。
ホワイトベレーの連中でないとすれば、残された可能性はひとつしかない。
あの時、俺達の罪が第2級と確定したその場に居たのは、ホワイトベレーと俺達の他にはあと2人だけ。
世話になっているだけに、あまり考えたくないことだな。

「あらクロス、何を考えているの?」

ロビンの声に顔を上げれば、状況に合わない程穏やかな表情を浮かべていて、余計なことを考えていた自分がふと馬鹿らしくなる。
新しく煙草をくわえ、大したことじゃねぇと誤魔化して、後ろ向きに白い海の上を走る船を楽しむ。

「彼らは大丈夫かしら?」

「大丈夫だろ?殺したって簡単にゃ死にそうにねぇし」

少なくともルフィは、と付け足して笑ってやる。
笑うロビンと俺には、さっきからずっとビビりまくりのナミとチョッパーがしがみついているが、何をそんなにビビっているのやら。
状況的に何も出来ない今、ロロノアも諦めたように甲板に座り込んでいるが、ビリビリと警戒している気配が伝わってくる。
もう少し肩の力を抜いたらどうだ、とロロノアに言ったが、警戒心は解かれない。

「まぁ取り敢えず、神の島とやらに着くまでどうしようもねぇし、いい加減諦めろよナミ」

「何でアンタはそんな落ち着いてんのよ!?良いわ、何かあったらアンタが責任持ってあたしを守りなさいよ!!」

「わぁってるっつーの、大事な航海士だからな」

胸倉を掴んで泣き付いてきたナミの頭を撫でてから、ビビりっぱなしのチョッパーを落ち着かせるために背中を撫でる。




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