CROSS

□Angel
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「は〜〜〜〜っ!!ここは何なんだ!!冒険のにおいがプンプンすんぞ!!」

ルフィの雄叫びが聞こえ、その言葉に口元には笑みが浮かぶ。
10年前と、本質的には何も変わっていない子供のようなルフィの存在は、今も尚変わらずに俺の心へ響く。
また逢えて良かったと、先を歩くロビンにも聞こえないように小さく呟き、木の幹に足を絡ませてぶら下がるルフィを見上げる。
おまえは猿か、とぼそりと呟いてふかふか雲の浜に上がる。
足が柔らかい雲に埋まり、何とも言えない不思議な感触に思わず何度かその場で足踏みをしてから、ぎゃあぎゃあと騒いでる連中を眺める。
こうして見ていると、海賊団には到底見えない連中なんだと改めて実感して、苦笑めいた笑みが口元に浮かぶ。





不意に、ポロンポロンと竪琴のような弦楽器の優しい音色が聞こえてきて、音が聞こえる方へと視線が集中する。

「ありゃ何だ!?おい、あそこに誰かいるぞ!!」

サンジがそう叫び、少し離れた場所にある、浜よりも盛り上がった雲の上を指差す。

「また…!!ゲリラか!?」

長っ鼻やナミが慌てる中、再びサンジが叫ぶ。

「待て、違う!!……天使だ!!」

「天使!?」

また、天国の門に居たような梅干しみたいな天使じゃないだろうな、と思いながらそちらを見つめる。
盛り上がった雲の上で、一人佇んで竪琴を奏でているのは、遠目には若い女性に見える。
騒いでいるこっちに気付いたのか、竪琴の弦を弾く手を止めて彼女が振り返る。

「………へそ!!」

「あ!?」

柔らかく微笑み、彼女は俺たちへ向けてそう言った。
へそって、空島特有の挨拶なのだとしたら奇抜な挨拶もあったもんだ、と思う。
くわえ煙草から立ち昇る紫煙の向こうに、彼女の問い掛けに答えるルフィの姿が霞む。

「ここはスカイピアのエンジェルビーチ。ふふっ…それ、コナッシュ、飲みたいんですか?」

「ん?」

ルフィが両脇に抱えていた、大きな木の実らしき物を受け取った彼女は、手慣れたようにナイフで木の実の裏に穴を開けてストローを挿す。

「はい、どうぞ。私はコニス、何かお困りでしたら力にならせてください」

受け取ったコナッシュの中身を飲んで、ヤバうま、と騒いでいるお子様3人をよそに、彼女はスーと鳴くキツネを抱いて名乗った。
コニスを口説こうとしたサンジが、ナミによって邪魔だと排除される。

「知りたい事がたくさんあるのよ。とにかく、私達にとってここは不思議な事だらけで……」

ナミの言うように、俺たちにはこの空島には不思議な事だらけで知りたい事だらけなので、取り敢えず空島に来てすぐに住人と知り合えたのは有り難い。
さて、何から聞くべきかね、と考えていたら、ロロノアが雲の海から何かが近付いてきているのに気付く。





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