CROSS

□for SKYPIEA
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10時頃、いつの間にか甲板で転た寝をしていた俺の耳にやたら慌てているナミの声が響き、さすがに眠気が覚めてしまった。
同じように、突然の騒ぎに驚いたクルー達の怒鳴り声が響く。

「何だ何だァ!!?」

「予想よりもずっと早く積帝雲が現れたって!!まだ海流の位置もわかってないのに!!」

ナミが慌てたように言った直後から、船上からのショウジョウの声をソナーに、ウータンダイバーズが海流を探す。
完璧に統率された動きに、羊船の俺たちはただ圧倒されて見ていることしか出来ず、あっという間に海流を見つけた猿山連合軍に導かれる。
巨大な渦に、約3人が悲鳴を上げて泣き叫んでいるが船長はかなり楽しげで、長っ鼻の訴えにも満面の笑みで答える。

「夢のまた夢の島!!こんな大冒険逃したら一生後悔すんぞ!!」

ルフィが滅茶苦茶乗り気だと判明したため、泣き叫んでいた3人も涙ながらに諦める。
そして、ついに羊船が渦に呑まれた瞬間、海中から巨大な渦がかき消された。

「……じきに来るな」

びりびりと、船底から伝わる強大なエネルギーの前兆を感じ、俺は小さく呟いた。
同じように、ナミも何かを感じ取っている。
ノックアップストリームが、普通は避けるべき災害であることを知る者としては、まさに死を覚悟する瞬間だ。
その時、巨大な筏のような妙な船が近づいてきた。
海賊旗を掲げているが、シンボルには見覚えがない。
どうやら、名を上げるために麦わらのルフィの1億の首を取りに来たらしいが、ルフィは賞金額が値上がりしたことに大喜びしている。
挙げ句、新しく6千万ベリーで手配されたロロノア・ゾロが金額が不満だ、などと笑っている始末だ。

「賞金首になったことが、そんなに嬉しいのかしら?」

「海賊にとって、賞金首になることは一種のステータスみたいなもんだからな」

不思議そうなロビンに、俺は軽く肩を竦めて答える。
もっとも、一部の奴ら限定ではあるだろうが。
海賊って連中は、揃いも揃って何でこうも馬鹿ばっかりなんだろうなと、つい思わずには居られない。
あぁでも、今は俺も海賊の仲間だったか。
ぎゃあぎゃあと騒いでいたら、離れた場所から俺たちの様子を見守っていた猿山連合軍の連中が、唐突に騒ぎ出した。
一体何事だ、と訝しんだのも束の間、ぐぐっと船が下から持ち上げられ始める。

「来たな………ロビン、どっか掴まれ」

「え?」

側に居たロビンに忠告したが、ノックアップストリームが一瞬の内に船を突き上げ、あまりの爆発の衝撃に何とか船体にしがみつくのがやっとだ。
階段近くに居たロビンが、バランスを崩して転びそうになったのを見て、咄嗟に腕を伸ばしてロビンを抱え込む。
そこまでは良かったが、バランスを保てずにロビンを抱えたまま階段に倒れ込む。

「……っ!!ぃってぇ〜」

「ありがとう、大丈夫?」

「おぅ、立てるか?」

段差に後頭部と腰を強打し、縦になった羊船から振り落とされないよう、ロビンを抱えたまま上半身を起こす。
何とか立ち上がったロビンが、そのまま手を差し伸べて俺を立たせてくれる。
軽く礼を言って、ずり落ち掛けていたサングラスをかけ直し、現状把握のために船体から身を乗り出す。

「立ち昇る海流と上昇気流か」

下から吹き上げる風と、空へと向かって立ち昇る巨大な水柱を考えると、ここは航海士の腕の見せ所だろう。

「おいナミ……」

「帆をはって!!今すぐ!!!」

ナミを呼ぼうとしたら、どうやら自分で気付いたらしい。
説明を聞いても、一部のヤツらは理解出来なかったらしく首を傾げる。

「相手が風と海なら航海してみせる!!この船の航海士は誰!?」

力強いナミの言葉に、士気が上がる。
的確な指示に従い、縦になっている状態の船の上を全員が走り回り、空へと立ち昇る海流を航行する。
そして、巨大な水柱から船体が徐々に浮かび上がり、そのまま羊船は空を飛ぶ。
目の前には、陽の光を遮る程に積み重なった雲の化石、積帝雲が迫っている。

「空島が本当にあるかどうか、その目で確かめてみろよ……未来の海賊王」

船首にしがみつき、目を輝かせている船長の背中に向け、小さく呟く。











―――――さぁ、おまえの心を駆り立てる冒険へと俺を連れて行け――――











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