CROSS
□appoint
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「何だよロビン、クロスと知り合いなのか?」
不意に割り込んできた声に、ロビンと2人揃って船首甲板を見上げると、手摺から身を乗り出したルフィが居た。
麦わら帽子を片手で押さえ、少し不満そうな表情を浮かべているルフィが何だかおかしくて、俺は小さく笑いながら床を蹴って跳び上がる。
ルフィのすぐ横、手摺の上に降り立った俺に近くに居た長っ鼻の男と青っ鼻のトナカイが悲鳴を上げたが、それを綺麗に無視して手摺に座る。
「ロビンとは7、8年前に同じ組織に居た仲だ」
「あら、もうそんな前になるのかしら」
「さぁ?適当だけど、たぶんそんなもんだろ」
振り返ってそう答えると、ロビンは変わらないわね、と楽しげに笑った。
「お、おいルフィ!!誰なんだ、その男は!!」
「ん?うちの副船長だ」
にっ、と笑って当たり前のように答えたルフィの言葉に、一瞬の間を置いて複数の叫びが甲板に響いた。
叫んだのは、長っ鼻と青っ鼻にオレンジ髪の女。
3人からのあからさまな警戒心と敵対心は、俺には特に気にすることじゃねえからきれいさっぱり無視するが、ルフィの発言はさすがに無視出来ない。
新参者の俺を、いきなり副船長に任命するな。
「おいおいおい、ちょっと待てよルフィ………この船の副船長はこのウソップ様だろう!?」
長っ鼻が胸を張って宣言したのは良いが、突っ込み所が違うと思うのは俺だけだろうか。
「いや、ウソップは狙撃手で、クロスが副船長だ」
「何でだよ!?」
「10年前から決めてたんだ」
ルフィのその言葉に、長っ鼻も周りで聞いていた他のクルーたちも意味が判らないと言いたげに首を傾げたが、俺は首を傾げるどころじゃなかった。
このバカは、一体全体何を考えてやがるんだ。
「おいこらちょっと待て、10年前から決めてたってのはどうゆうことだ?」
ガンッ、と隣の麦わら帽子を思いきり殴り付けてやると、殴られたとこを撫でながら涙目でルフィが俺を見上げた。
「だってよぉ、クロスは副船長に似てんじゃねえか。だから、クロスがこの船の副船長じゃなきゃイヤだ!!」
ルフィの意味不明な言葉に、周りのクルーたちは更に首を傾げるが、俺にはルフィの言いたいことが判った。
ルフィが言う副船長とは、赤髪んとこのベン・ベックマンのことだろう。
つまり、ベックマンと俺が似ているから俺を副船長にしたい、ということらしい。
だが、俺とベックマンの何処が似ているのかはさっぱり判らないけど、それはまぁ無視しても良いだろう。
「だからって、新参者の俺がいきなり副船長になるわけにゃいかねえだろ」
「何でだ?別にクロスが副船長で問題ねぇだろ?」
振り向いたルフィの質問に、周りで見ていたクルーたちは顔を見合わせる。
そして、口々に答える。
しょうがない、と。
おいおい、そんな簡単な一言で認めちまって良いのかよ、と思わず内心で突っ込む。
まぁ、唯一長っ鼻だけが俺は認めねぇと騒いでいたが、長っ鼻の意見は最初から除外されている雰囲気だ。
「ほらな、みんなもクロスが副船長で良いってよ」
「…………良いのかよ」
「仕方ねぇだろ、うちの船長は一度言い出したら聞かねえんだからよ」
緑頭の言葉に、他のクルーは同じタイミングで頷く。
諦めにも似たその様子に、何か申し訳ない気分になってくる。
「えーっと……何か、バカな弟が随分とご迷惑をお掛けしてるようで、ほんと申し訳ない」
「「いやいやまったく…………って、弟ォォオ!!??」」
いやほんと、息ぴったりな奴らだな。
ルフィとロビンを除く、麦わら海賊団のクルー全員の息ぴったりな雄叫びに、思わず感心しちまったよ。
お笑い集団みてぇだ。