CROSS
□meet again
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「それが何だ?確かその男、異名は『ハイエナ』だったか?人様が手に入れた物を横取りすることしか出来ねぇような小物風情の部下が、何を偉そうに抜かしてやがる」
「っ、んだとてめぇ!!」
「おい、よせ!!あいつはおまえの敵う相手じゃねえ!!」
「そいつの言う通りだ。力の差も見抜けねぇ雑魚が、よくこのグランドラインで生きてこられたな」
引き止められて暴れるサーキースが、見下したような青年の言葉に更に激昂する。
だが、仲間が差し出した一枚の手配書を見た途端、サーキースは真っ青になり動きを止める。
差し出された手配書には、乱雑に伸びた灰銀色の髪とジャケットのファーの襟飾りを風に翻して、鋭利な眼差しの血のように紅き眼の青年の顔写真。
その顔は、今まさに彼らの前に立っている青年の顔で、更に驚くはその懸賞金額。
「懸賞金……さっ……3億、2千万ベリー……?」
震えるサーキースの言葉に、周囲を取り囲む町の住人たちが一斉に悲鳴を上げ、後退って遠巻きに青年を見つめる。
「聞いたことあんだろ!?あの男が『赤眼の死神』だ!!」
「んん?誰だ、それ?」
呑気なルフィの呟きに、『赤眼の死神』と呼ばれた青年はどうでも言いように麦わらに向き直ると、コツコツと靴の踵を鳴らして歩み寄る。
「んん?あっ、もしかしてクロスか!?」
「やっと思い出したか、この馬鹿が……ったく、身体は大きくなっても中身はガキのまんまだな、てめえは」
左手を腰に当て、呆れきったような溜め息を盛大に吐き出したクロスと呼ばれた青年は、苦笑しながら麦わらを見つめる。
うほーっ、と嬉しそうに叫んだルフィの頭を軽く叩いて、クロスがサングラスをかけ直す。
「なぁなぁクロスっ、あの約束覚えてるか!?」
「馬鹿、覚えてるから呼び止めたんだ。横を素通りしやがって……あぁ、エースにはまだ逢ってねえよ」
「ほんとかっ!?ぃやったーっ、俺の勝ちだ!!じゃあクロス、約束通り俺の仲間になれっ!!」
ガンッ、と鈍い音が響く。
頭を押さえたルフィに、左手を握り締めたクロスが答える。
「年上に対する言い方ってもんがあんだろ?」
「す、すみません。クロス、俺の仲間になってくれ」
「……まぁ、それでも良いか」
サングラスの奥で、紅き眼を優しげに細めたクロスの言葉に、ルフィが子供のような笑顔を浮かべる。
端から見たら、まるで兄弟のようなルフィとクロスの2人の様子に周囲で見ていた人達は呆気に取られているが、当の本人たちは全くと言っていい程気にも止めない。
「で、おまえの船とお仲間は何処に居るんだ?」
「おうそうだ!!朝までに戻る約束なんだ!!」
「……良く判らんが、ここでのんびり話し込んでる時間はねぇんだな?だったら、おら、とっとと行くぞ」
パシッ、と麦わら帽子を叩いたクロスが先に立って町の外へと歩き出すと、嬉しそうに笑いながらルフィが後を追いかける。
遠ざかる2人の背中を残された連中は呆然と見送り、2人が完全に闇に溶けた頃にようやく思い出し、ベラミーの介抱を始める。
ガチャガチャと、背負った荷物を揺らしながら楽しげに走るルフィの隣を、何があったのか要領を得ない説明を聞きながらクロスは走る。
途中で幾つかの質問をして、ルフィたちがこのジャヤに着いてからあったことを大体理解したクロスは、走る速度を落とさずに肩を揺らして笑った。
「それで、空島に行く方法は判ったのか?」
「あぁ!!でも何か難しくてよく判んねぇ。確か、ノックアップストリームがどうとか、って言ってたけど」
「相変わらずの馬鹿だな、おまえは……ノックアップストリームだと?はは、随分と危険な方法で行くんだな」
苦笑を浮かべたクロスは、話の途中にも関わらず突然道を逸れて森へと駆けていくルフィを追いかけ、ヘラクレスを見つけたと喜ぶルフィを殴る。
飛んで逃げるヘラクレスを、逃がしてなるもんかと追いかけ始めたルフィに、クロスは呆れたように深い溜め息を吐く。
ルフィが方向音痴だと知っているから、クロスは仕方なくその後を追いかけて森の中を走り出すが、空が白み始めていることに眉を寄せる。
朝までには戻ると、仲間と約束していると言ったのはどこのどいつだよ、と前を走る麦わら帽子に向かって呟く。
30分程して、お目当てのヘラクレスを捕まえたルフィの頭を力一杯殴り付けたクロスは、蹲ったルフィの襟首を掴んで再び走り出す。
夜が明けきるまで、もう30分もかからないだろう。
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