CROSS
□VS.GOD-2-
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立ち上がったエネルは、唇の端に伝った血を拭い、不適に笑ってみせる。
言葉もなく、ただ呆然とエネルを見上げていたワイパーは、右腕の激痛に地面に倒れ込みかける。
「憐れなもんだ………戦士ワイパー」
「…………おれの名を……!!」
「ん?」
「気安く呼ぶな!!」
息を切らし、血を吐きながら、ワイパーが叫ぶ。
800年前、この都市の存亡を賭けて戦った誇り高いシャンドラの戦士達、その末裔が自分達なんだと。
「……ある日突然、故郷を奪われた……"大戦士カルガラ"の無念を継いで、ハァ…400年…!!先祖代々……ただこの場所を目指した……!!やっと辿り着いたんだ」
もはや、立ち上がることすらキツいだろう身体で、ワイパーは立ち上がる。
ただ、エネルを倒し、故郷を取り戻したい一心で。
そんなワイパーに、クロスは無言で煙草を噛み締めた。
「お前が邪魔だ!!」
その気迫は、一瞬エネルの恐怖を凌駕した。
だがエネルは、そんなワイパーの足元、海楼石が仕込まれているウェイバーを棒で砕く。
立っていることがやっとのワイパーは、なす術もなくバランスを崩し倒れる。
倒れかかったワイパーを、咄嗟にクロスは支えていた。
頭で考えるよりも、感情が先に動いていた。
クロスはこれ以上、ワイパーが傷つくのを見たくなかった。
守る術も、エネルに勝てる術もない状況下で、ただ一人戦おうとするワイパーを放ってはおけなかった。
何より、クロスの身体を流れている血が、ワイパーを救おうと騒いでいた。