CROSS

□The sky of knight
1ページ/4ページ


歩いて戻ったら間に合わないかもしれない、そんな可能性も十分に考えられるから、足場が悪いのに構わず走り出す。
走り出してから、根が走る大樹の下を走って戻るよりも頭上に広がる枝を辿る方が速いと判断して、樹の幹を駆け上がる。
太く張り出した枝の上を、身軽に飛び移りながら走る。
森の深い気配の中に、一際強く殺気を放つ輩の存在を感じ取ったのは良いが、祭壇とは逆の方角にも別の殺気を感じる。
これが神官とか言う連中か、と短くなった煙草を握り潰す。
チョッパーの奴、船を守ろうとして無理をしてなけりゃ良いんだが、と唇を噛む。

「ジョ〜っ!!」

「っ!?」

突然聞こえた妙な鳴き声に、枝を踏み外しそうになるのを堪えて足を止め、辺りの樹木を見回す。
俺の周囲を囲む気配に、必然的に警戒心が増すが、どうも殺気や敵意とは違う気配だ。

「ジョ〜」

妙な鳴き声と大きな羽ばたきと共に、見覚えのある姿は知っているものより大きくて、思わず目を見張って息を呑む。

「……サウス、バード……!?にしちゃ、やけにデカいな……」

「ジョ〜っ、ジョジョ〜!!」

辺りを囲むサウスバードは、何かを訴えるように鳴く。
多少なら動物の言葉も判るが、そうやたらと話されては上手く聞き取れない。
初めは判らなかったが、よくよくサウスバードたちの言葉を聞き取れば、チョッパーと神様が危ないことは判った。

「………神様?」

神・エネルとか言う奴のことかと思ったが、サウスバードが神様と呼んでいるのは違う相手のようで、よく判らんがとにかくチョッパーとメリーが危ないことは伝わった。
ひとつ頷いて、周りで群れて飛んでいるサウスバードを引き連れて、生け贄の祭壇まで一気に駆け抜ける。





祭壇が見えた所で、俺は足を止める。
剣戟にも似た甲高い音が響き、それが白海で逢ったあの爺さんと見知らぬ男が、互いに槍を駆使して空中で戦っているのを見る。

「あれが神官か……」

気配を殺し、枝葉の陰からその戦いを見守る。
メリーがだいぶ燃えていて、メインマストがなくなっていることに多少驚いたが、船の上の怪我をしたチョッパーを見て大体を察する。
爺さんが僅かに劣勢か、と見た次の瞬間、突然爺さんと爺さんを乗せた鳥の動きが止まる。

「カハハハハ、どうかしたかガン・フォール!?」

笑う神官に、枝葉の陰から飛び出して爺さんを助けようとしたら、傍らのサウスバードが羽根を広げて遮った。
咄嗟のことに驚き動きが鈍ったせいで、爺さんが神官の槍を避けられずに肩を貫かれて、傷口から全身へ炎をが広がる様を見た。

「ジョ〜」

小さく押し殺してサウスバードが鳴き、俺は湖に落ちる爺さんをただ見届ける。
チョッパーの叫び声が森に響き渡るが、俺は黙って気配を殺して唇を噛む。
理由は判らないが、サウスバードが動くなと言うから仕方なく身を隠しているが、さすがに爺さんがやられるのを見てるのは良い気分がしない。
そうこうしてる内に、爺さんを助けようとしてチョッパーまでが湖に飛び込み、主人の後を追わせるように鳥まで湖に落とされる。

「………さてと……逃亡者4人はもう狩られたかな?」

神官がそう言い残し、湖の上を飛び去る。
逃亡者4人、と言う言葉が気に掛からなくもないが、今は爺さんとチョッパーを助けるのが先だ。





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ