CROSS

□sacrifice
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「メシ貰って来る。野郎共、先に冒険準備を整えとけ!!」

波打ち際で、ナミがルフィの怒鳴り声にムッとして、たまたま近くに居たロロノアに当たる。
そんな様子を、先に船に戻った俺とロビンが眺めていると、次に戻ってきたチョッパーにまでナミが脅しを掛ける。

「わかってんだろ!?ルフィを説得できねェんじゃ、全員でデモおこそうが聞きゃしねェ」

ロロノアがナミにそう言って、どうでも良さそうな態度を見せる。
器用に梯子を使わずに船に上ってきたチョッパーに、ロビンが微笑みながら次に戻ってくる人用に梯子を下ろす。
すぐに、イライラとした様子のナミが船に上ってくる。

「ロビン!!2人でルフィを倒さない!?」

「ムリよ」

「じゃあクロス!!あんた仮にもルフィの兄なんでしょ!?何とか説得しなさい!!」

「あの顔じゃ俺が言っても聞かねぇよ、諦めろ」

憤るナミにビビっているらしいチョッパーを、宥めるように抱き上げて肩に乗っけてやりながら、紫煙を吐き出すついでに答えてやる。
俺が言って素直に聞くような弟なら、しなくて良い苦労までしなくて済んだっつの。
面倒なことは嫌いなんだが、この面倒事からは逃げられないらしい。
神とやらが怖いわけではなく、要らぬ面倒に巻き込まれるのが嫌なだけで、ルフィ曰くの冒険とやらも嫌なわけでもない。
出来るなら、さっさと冒険を終わらせて青海に帰りたいと思うのだが、ルフィが満足するまで帰るのは無理だろう。

「……しょうがねぇか」

「何がだ?」

「ん?何でもねぇよ」

紫煙と共に吐き出した呟きに、肩に乗せたチョッパーが不思議そうに問い返したが、話しても仕方のないことだと誤魔化す。
どう足掻いても面倒事に巻き込まれるなら、楽しんだ方がまだマシだろうと頭を切り替えて、禁断の聖地なる場所について考える。




ナミによれば、神の住む土地、アッパーヤードとは地面のある島のようで、てっぺんが見えない程の大樹に覆われていたらしい。
空島の歴史がどのくらいになるか判らないが、それ程の大樹が育つには何百何千と言う月日を要する。
そして、アッパーヤードに居たと言う奇妙な4人は、先にここに来たらしい不法入国者をまるで獲物のように追い詰めて、消し去ってしまったらしい。
目の前で見てしまったナミが、そのことにビビるのは仕方がないかもしれないが、ルフィに冒険を諦めさせるのは難しい。

「アッパーヤードってどんなとこなんだろう」

冒険が楽しみなのか、純粋な瞳で先程ナミが逃げてきた方を眺めているチョッパーに、シャツを着てきたナミが脅すように恐ろしい場所よ、と吹き込む。
ビビらせるな、と怖がるチョッパーの頭を撫でながら言えば、本当のことだと返される。

「取り敢えずクロス、あいつらが戻ってきたらすぐに船を出せるように、今の内に錨を上げておいて」

「へいへい、と」

船に戻ってすぐに寝始めたロロノアを無視して、暇を持て余しているように見えたらしい俺に命じて、ナミはテキパキと出航の準備を始める。
その時だった。
船底に何かがぶつかったような衝撃が船を襲い、白い雲の波間から巨大なハサミが現れる。

「何だコイツ!?」

「エビ!?」

船が持ち上げられ、白海にあった天国の門から俺たちを雲の川で運んだ巨大エビより大きいエビが、メリー号を背に乗せて走り出す。




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