CROSS

□Angel
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船が白い雲の海に着水し、目の前の島に向かって進む。
興奮を抑えきれないお子様3人は、甲板から身を乗り出してしきりに騒いでいる。

「へぇ、植物もあるのか」

見える限りでは、植物を育むような土はないのに生い茂る木々を見ると、空魚のように空の環境に適応した植物なのだろう。
少し離れた所には、町らしき建物が見える。





波打ち際に、出来るだけ近づいて停泊させた船の甲板から、お子様3人が真っ先に飛び降りて駆けて行く。
船長のルフィを先頭に、島に上陸したお子様3人は地面がふかふか雲だとギャーギャー喚きながら、ふかふか雲のビーチを駆け回る。

「おい、錨はどうすんだ!?海底がねェんだろ、ここは!!」

「んなモンいいだろどうでも、早く来てみろ、フカフカだぞこのビーチは!!」

「どうでもって、おまえ……」

ロロノアの問いかけに、ルフィは浜からそう怒鳴り返す。
はしゃぐ気持ちは判るが、船長のくせにそんな適当で良いのかよ、と苦笑いが浮かぶ。
どっかで躾方を間違えたかと、思わず不安になった。

「……まぁ取り敢えず、錨はふかふか雲に刺しておけば問題ないだろ」

ロロノアにそう言えば、あぁと短い返事が聞こえた。
錨を下ろすのに手を貸す必要はなさそうだし、俺は遠くまで広がる白い海に視線を向ける。
サンジのはしゃぐ声が聞こえ、クルーたちが次々とビーチへと飛び出していくのを背に、俺はただ海を眺める。
白海で逢ったあの仮面の奴に、何故か判らないが懐かしさにも似た感情を抱き、やけに胸がざわめいてならない。
胸騒ぎとは違う、不思議な感覚に知らず眉間に皺が寄っていたのか、船室で着替えてきたロビンが俺の眉間を突く。

「あなたは行かないの?」

「いや……ちょっと少し考え事をしてただけだ。保護者扱いだからな、行かないわけにもいかんだろ」

苦笑を浮かべて答えると、ふっとロビンが微笑を浮かべる。
肩に羽織ってた濡れたジャケットを脱ぎ、船首の羊の角に引っ掛ける。

「………あなたは?」

まだ残っていたロロノアに声を掛けたロビンは、少し離れた波打ち際ではしゃぐクルーたちを見つめながら、小さな笑みを浮かべて感慨深げに呟く。

「航海や上陸が……冒険だなんて、考えた事なかった」

「……あぁそうだな。だけど、悪くない」

「そうね」

俺とロビンの呟きの意味を、傍らで聞いていたロロノアには判らなかったらしく、不思議そうな表情で俺たちを見ている。
だが、俺もロビンもそれ以上は何も言わずに、手摺を飛び越えて船を降りる。





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