CROSS

□appoint
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モックタウンを出て、森でヘラクレスを捕まえたと喜ぶルフィの脳天を一発殴り、ジャヤの東側の海岸に辿り着いた時には、とうに朝日が昇りきっていた。
森を抜け、海岸に停泊している3隻の船を視界に納めた俺は、その中の一隻を見て溜め息を吐きたくなった。
羊の船首にトサカを付け、船体には羽を付けて船尾には尾羽まで付けて、力任せにニワトリに見せている。
恐らく、この船でノックアップストリームによって空に飛ぶつもりなんだろう。
普通に考えて、何故ニワトリに似せる必要があるのかが全く判らない。
根本的なデザインセンスの問題だな、とぼんやりと考える。
そんなくだらないことを考えていたら、羊頭の船に跳び乗ったルフィがモンブラン・クリケットに別れを告げて俺を呼ぶ。

「おい、クロス!!早く乗れよ、出航するぞ!!」

「はいはい、っと」

軽く地面を蹴り、陸を離れ始めた羊頭の船に跳び乗る。
とんっ、と軽い着地音をさせて船の甲板に降り立った俺を無視して、ルフィは海岸に立ち見送るクリケットにもう一度別れを叫ぶ。
こいつは本当に変わらないな、と少し感慨深くなるのは、年のせいだとは思いたくもない。





マシラとショウジョウの船に挟まれて、グランドラインを真っ直ぐ南に向けて航行する羊船の甲板で、ショウジョウの説明を聞くとはなしに聞く。
だがルフィは、森で捕まえてきたサウスバードの特性に夢中になっていて、説明など毛程も聞いちゃいない。

「………聞いたところで、あいつにゃ理解なんぞ出来ねぇんだろうけどな」

苦笑混じりに呟いた時、ふと俺に向けられた視線を感じた。
煙草に火をつけ、紫煙を吐き出すついでに顔を上げると、口元に笑みを浮かべた黒髪美人と目が合う。

「久し振りねクロス、元気そうで何よりだわ」

「おぅ、ロビンじゃねぇか。何だ、おまえがこの船に乗ってるってことは、クロコダイルが墜ちたってのは本当か」

「えぇ、本当よ。船長さんたちの手で墜ちたわ」

壁に背を預け、横に立ったロビンの顔を横目で伺い見れば、初めて見る穏やかな微笑みを浮かべている。
以前逢った時とは、比べ物にならないくらい穏やかなその表情に、俺は少し安堵する。
お互いに、他人の数十倍以上の辛く苦しい暗い人生を送ってきたことを知っているから、ロビンがそんな表情を見せられることが嬉しく思える。

「それにしても、何故貴方が船長さんと一緒に?」

「昔、ちょっとした約束をしたもんでね」

「約束?」

「そ、随分昔の約束だがな」

ふ、と口元に笑みを浮かべてそう呟いて、空に向けて紫煙を吐き出す。
10年前、別れ際に交わした約束を俺もあいつもお互いに忘れていなかったから、俺は約束通り仲間になることにした。
ただ、俺の抱える闇を、話すべきか迷っている。
だけど今は、ほんの少しの間だけでも良いから信頼し合える仲間として、この船に乗っていたいと願わずには居られない。










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