CROSS
□20years ago
1ページ/6ページ
「おーおー、すげぇ騒ぎだな」
「あら、クロス」
空の酒瓶を手に、ようやく帰ってきたクロスを見つけ、ロビンが微笑む。
そんなロビンに近付き、クロスはその辺に酒瓶を置いて騒ぎの中心を見遣り、はしゃぐルフィに小さく笑う。
救われたのは、空の住人やシャンディアだけではなかったのだと教えて、理解出来るとは思っていない。
だから、あとで礼だけ伝えればいいかと思い、クロスはロビンに向き直る。
「貴方、まだ船医さんに診てもらってないでしょう?」
「まぁな。でもその前に、喉が乾いてんだよ」
その一言に、ロビンは隠された意味に気付く。
それは、昔から変わらないクロスのある頼みの言葉。
「何処か物陰に行く?」
「そうだな……あいつらには、まだ知られたくねぇし」
立ち上がったロビンは、辺りを見回すと、クロスと連れ立って人気のない遺跡の裏に向かう。
暗がりの中、ロビンの左手を手に取ったクロスは、久し振りのその本能に身を委ねる。
すらり、と伸びたロビンの手を口元に近付け、手首の辺りに舌を這わす。
くすぐったそうに、ロビンの手が震える。
そして、手首の血管の辺りに、普通よりも鋭くなった犬歯を突き立てる。
プツッ、と皮膚を突き破り、血管に犬歯が刺さる。
チュ、と小さな音をさせて、そのままロビンの血を吸い取る。
クロスの喉が動くのを、ロビンは黙って見ていた。
昔から、ロビンはクロスに血を与える時はこうして、その様子を見つめていた。