★ひとつ星★

□NO SMOKING
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11月19日
スタジオにて。

「外、さっぶーっ」
ヒョンが遅れて入ってきた。
手にはコンビニの袋。
遅刻なのにコンビニに寄り道する所はさすがとしか言いようがない、けどそれなりに遅刻を気にして走ってきたようだった。
頬を赤くしてちょっとハアハアと息切れしている…かわいい…

迷わずヒョンに手を伸ばして両頬を覆った。
「な、なに!?」
「…頬が冷たいから…」
「…」
そのまま動かないで僕をジッと見つめてくる。
ちょっと時間がとまったような感覚。その後、徐に僕の手をどけようと手首を掴んできた。
「…も、もう温まったから…」
照れくさそうに笑うヒョンが愛しくて堪らない。
「口唇はまだ冷たいでしょ」
こうゆう時に思わず出てくるのは使い古された常套句だな、なんて思いながら口唇をヒョンに近づけていく。
「…なっ!?」
軽くキスしたら予想通りの反応。
続けざまに今度はちゃんとしたものを。
舌を絡めてたっぷりの愛情を伝えるように深いキスを交わす。
「ばぁか、温めすぎだよ」
ヒョンが俯いて僕の鎖骨におでこをあてた。
ああ、かわいい…もう一度キスしようとした時に無粋な声の邪魔が入った。

「はいはい、いいかげんにしといてもらえるかなぁ。遅刻しといて二人の世界はないんじゃなあい?」
…ちっ 誰だよ、せっかくのムードがぶち壊しだよ。
僕が声の主のほうを見据えるのとほぼ同時に脛に激痛がはしる。
「ちょ、みんながいるなら早く言えよっ!」
ヒョンが真っ赤になっている。この激痛はヒョンが怒って蹴ったものらしい。
てゆうか、え!? 気付いてなかったの?
普通に考えたら 遅刻してきたんだから他のみんなは揃っているって分かるでしょ。
そんなに僕しか見えてなかったんだ?(嬉)
…と思っても口には出さない、素直にゴメンと謝る。これ、大事。

ここで普段なら済まされるはずなのに、またもや余計な一言が口を挟んできた。
「で、ヒョン、今のちゅーはタバコくさくなかった?」
おい、なに聞いてんだよ。
ヒョンを見ると一瞬かたまって でも小さく首を横に振った。
え、返事しちゃうの?
え、タバコくさかったの?
ふたつまとめて軽くショックだった。
昨日、あれからタバコは吸ってないのに。

荷物を置きにロッカーにむかうヒョンの背中を見送って 傍にいたゴニルに聞いてみた。
「タバコ、そんなに匂うもんかなぁ」
「…僕にきく?」
うん、ヘビースモーカーに聞くのは間違いでした。
質問する相手をかえてみる。
「ソンジェ兄、ゴニルとキスしてそんなにタバコの匂い、気になる?」
なに聞いてんだよっ!と隣で赤くなりながら抗議するゴニルを無視してソンジェ兄はあっさりと答えくれた。
「まぁ感じるけど、タバコの匂い含めて それがゴニルのキスの味だしね〜」
そう言いながらゴニルにウインクをする。
あ、ゴニルがデレた。うらやましいなぁ。

もしかしたらヒョンは今までずっと僕のキスの味がイヤだったのかなぁ…
そう考えたらかなり落ち込んで、スタジオレッスンはほとんど身に入らなかった。
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