★ひとつ星★

□NO SMOKING
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11月18日
ミーティングルームにて。

「で、さ、ヒョンが欲しいものは決まった?」
本来のミーティングテーマはさておいて、と早速ヒョンにリクエストを迫る面々。
お前ら、仕事しろよ。

「うん。それぞれに書いてきたよ」
そう返事をして封筒をみんなに渡していく。
…ん!?
僕のは?なんでないの?
封筒を受け取るために差し出した手の拠り所に困惑していると、みんなから次々と「え〜っ!?」と声があがった。

「ちょ、これ、無理じゃん!」
焦るみんなをニヤニヤ見ながら 楽しそうにヒョンが笑う。
「欲しいもの、くれるんだろ?」
どうやら無理難題なリクエストをしたっぽい。
僕はお互いにリクエストカードを見せ合いながら唸っている様子を一人疎外感を持ってみていた。

「ソンモは何だったの?」
ヒラヒラとカードを見せながらジヒョクが聞いてきた。
ちなみにジヒョクのカードには『ミッキーのサイン』とある。
「ディズニーランドに行かなきゃ無理だよぉ。ヒョン、ひどくない?」
他のみんなもウンウンと頷いている。
内容に違いがあれど こうゆうものばっかりなんだろうな。
「で、ソンモは?」
再度聞かれたけれど 渡されてないので答えようがない。

「…ソンモ、もらってないの?」
ソンジェ兄に気付かれた。
「ソンモからのプレゼントは欲しくないってことだ〜っ」
「期待されてないんだな」
よくも次々と好き勝手なことを!!
ヒョンもどうして僕はリクエストくれないのさ!
そう言いそうになった時だった。

「ソンモには後から渡すからいいんだよ!」
ヒョンがその場の空気を一喝するような声をあげた。
シンと静かになり この場がおさまったかと思いきや、ソンジェ兄がよけいなことを口にした。
「僕たちに見られたくないようなリクエストなんだぁ」
口の端をあげ完全にからかうモードだよ…ソンジェ兄…
「あ、そうゆうことね(笑)」
「どんなことお願いするの〜?」
「あ、誕生日の夜は寝かさないで、とか」
「最低10回はしてね、とか」
おい、お前ら… なに好き勝手言ってるんだ。
だいたい誕生日じゃなくたって寝かさないし、10回なんてこっちから頼みたいし。
とにかく完全に逆効果だ…ヒョンを見ると首の辺りが真っ赤になっていた。
…かわいい…

「ば、ばかか!!いいから、ほらっミーティングするぞ」
ヒョンは話題を打ち切って仕事に入ろうとする。
だけどあのソンジェ兄がそれを許すわけがない。
「ヤダよ」
…やっぱり。
お互いヒョンからのかなり無理なリクエストを叶える為に励まし合うんだからソンモのも知らせるべき、と言う筋が通ったようでムチャクチャな論理を持ち出してヒョンに詰め寄っている。
ヒョンも観念したのが 顔を真っ赤にしながら、みんなの前で僕に封筒を突きつけた。
あ、ちゃんと同じように封筒を用意してくれてたのか。
間の抜けたことを思いながらドキドキしてカードを取り出す。
僕の後ろに回って覗きこもうとしてるみんなが鬱陶しい。

「あっ」
カードをひらく直前にいきなり割り込んできた手にカードを奪われた。
「ちょ、ソンジェ兄かえしてよっ」
抗議する僕に構わずカードを開くとチラッとヒョンの方を見て たっぷり笑いを含ませながら「へぇぇぇぇ」と嫌みな声をあげた。
ソンジェ兄を囲み、みんなも次々とカードを見ては「ほぉぉ」とか「なるほど」とか言いながらヒョンに目配せして着席していく。
ヒョンは顔を俯かせて、みんなが何か言う度に既に真っ赤だった顔をさらに赤くさせていた。
だから本人がまだ見てないってば!!
憮然とした顔で着席すると漸く僕の元にカードが戻ってきた。
で、リクエストは何?
ドキドキしながらカードを見た。


【タバコくさくないキス】

…へ!?
思わず目線がカードとヒョンを何度も往復する。
相変わらず真っ赤な顔のヒョンがこっちを見ている。
えーっと…
僕まで顔が赤くなったのがわかる。
思わず首をポリポリ掻いた。
…タバコくさくないキスって何だ?
僕、いつもそんなタバコくさい?
そのことばかり考えてて、ミーティング内容はほとんど聞いていなかった。
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