銀魂

□アイスバー
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神楽は万事屋の、接客用のソファーに寝そべりながら、定春の大きな頭をなでていた。

フワフワ、モコモコとした毛並みが心地いい。
手を伸ばせば、神楽のきゃしゃな白い手は、すぐさま白いフワフワの中へうもれる。

(フワフワといえば…)

神楽はちらりと銀時を見つめる。

銀時はいつものように、自分の椅子で気だるそうに新聞を読みながら、いちご牛乳を飲んでいる。

その銀色の髪は、窓から射し込んでくる夏のまぶしい日差しをうけて、繊細なガラスの作りもののように輝いていた。



(きれいネ…)



ページをめくるゆったりとした手つや、文字を読もうと首をかしげるしぐさに、胸が熱くなる。

ふと、銀時と目があった。

「!」

「神楽ちゃん。どしたの?」

神楽は胸の内を気づかれないように顔をそむけた。

「何でもないアル。それよか暑いネ!エアコンほしいよぉ。ミキちゃん家には2台もあるのに、なんでウチにはないアルカ?」

「しょーがねぇだろいま金欠なんだから」

そういうと、銀時も暑そうに胸元をゆるめながら、台所へ向かった。

「ほしいアル〜エアコンほしいアル〜」

男性なのにスベスベしたきれいな肌がのぞいて、神楽はまたドキリとさせられた。

その気持ちを隠そうとするように、ただをこねるように足をバタバタさせた。




(私、おかしいネ…)




「エアコンほし、ひゃっ!」

突然、ほほに冷たいものがあたった。

「いまはこれでカンベンして、ね?神楽ちゃん?」

ほほにはアイスバー。見上げると、銀時がすぐ上から見下ろしていた。

「…!!」

「…?神楽、お前顔赤いぞ?まあこれで冷ませや」

そう言うと神楽にアイバーを渡してやる。

「安っぽいアイスでまるめこもうなんて、子どもだましネ」

「お前はまだガキだろ?」


ガキだろ…
その言葉に、今は胸が痛くなる。


「…ガキじゃないもん…こんなもん、いらないアル」

「あ〜?」

銀時は神楽の左隣にドカッと座ると、肩に腕を回して右手にあったアイスバーをうばい返した。

「!!」

一瞬抱きしめられたような形になり、神楽の胸の鼓動はますます高くなった。

人生を自分の力で乗り越えてきた大人の包容力ある腕に、いやらしくもなく無意識に触れられて、神楽はめまいすら覚えた。

そして少し切なくなった。

(私以外に、気軽にこういうことしてほしくないネ…)


「じゃ、俺がもらうわ。食べちゃおうかなあ。美味しそうだなあ〜」

あーんと神楽に顔を近づけて大口を開けて見せる銀時。

「やっぱりいるネ!」

神楽は食べられる寸前に再び銀時の手からうばった。



銀時の顔にかかった髪に触れるくらい間近に近づかれ、ドキドキが止まらず、息の苦しささえ感じた。



アイスバーをパクリと口にくわえると、立ち上がった。

「エアコンのない部屋なんて暑くていられないネ!ちょっと遊んでくる!」

急いでかけ出そうとする神楽の手首を銀時がいきなり強くつかんだ。

神楽は驚いで振り返った。

銀時は神楽の真夏の空のような青い瞳をジッとのぞきこんだ。

「な、何ヨ!?」

「お前、日傘忘れてるぞ?日に弱いんだからちゃんと持って行けよ」

そう言って神楽の手にそれを握らす。

神楽はお礼のようなものをボソボソとつぶやいて、家を飛び出して行った。


一人取り残された銀時は、頭をくしゃくしゃとかきながら、定春につぶやいた。

「…まだガキだと思ってたんだけどな…」








続く
 

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