ORIGINAL
□第一章
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「さあ、着いたわ…」
目に眩しい光が差し込む。
「私のお部屋にようこそ!」
さっきから、夢中で私に話しかけていた声の主が現れた。
長いツインテールの髪が、いかにもお嬢様らしい…身なりもそれなりのものだ。
「ふふ…あなたの名前はね、注文した時から決めてたのよ…」
そう言って彼女は私の髪を優しく撫でた。
「ねぇ、聞きたい?」
まったくこの少女は…人形相手に話しかけないで欲しい。
「教えてあげる…"アプリコット"…あなたの名前よ」
アプリコット…私の名前。
それがどういう意味なのか、私には分からなかった。
だけど、ずっと前から私は"アプリコット"だったような、そんな気がした。
少女は私を抱きかかえて、机の上にのせた。
ふと部屋を見渡すと、美麗なビスクドールたちが部屋の戸棚に並んでいた。
「あなたは私の宝物…一番大切な存在なんだからね」
少女はそう言ったきり、部屋を出て行ってしまった。
さて、じっとしているのもつまらない。
私は身体を伸ばし、部屋中のいたるところを冒険しようと動き始めた。
その瞬間、痛々しい目線が突き刺さるのを感じて、私は目線の方を見た。
戸棚に並ぶ人形たちが、私をまっすぐ見つめながら、動き始めた。