【ONE PIECE】
□次の星合よりも先に《1周年記念&5万打記念作》
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宴は最高潮だから、誰も気付かなくて、扉を閉めた背中でホッとした。
少し顔を上げれば、闇の中にラウンジの丸窓から漏れる光を浴びた笹の葉が浮かび上がっていた。
ラウンジ前の手摺に括り付けられたのは以前立ち寄った島で見つけてきた笹。
偶然にも私が乗船した日付は7月7日で七夕だった。
揺れる笹の葉。
その葉の先には、小さなくす玉、吹流し、提灯そして、色取り取りの短冊が靡いていた。
風に揺れる短冊がくるりと回る。
『お金が欲しい。』
『ナミさん。鍵付きの冷蔵庫買って下さい。』
『刀が欲しい。』
『肉が喰いてェぞ。』
其々の願望が連なって風に揺れているのを視界に笑みが零れるけど、それは直ぐになくなってしまう。
『海賊王に俺はなる』
『万能薬になりたいゾ』
『海の戦士になってやる』
沢山掲げられた短冊の中に、彼等の野望も刻まれていた。
願望ではない心の叫び。
其々が目標を――目的を持って進んでいるのに、私は。
手摺に寄り、笹の葉を弄り空を見上げる。
黒い厚い雲が広がりいつ降り出しても可笑しくない天気で、七夕恒例の天の川は見られそうもない。
願いは、沢山ある。
キリがないほどに溢れる。
服が欲しい、とか、もっと、可愛くなりたい、とか。
日常で思い描く願望はあるけれど―――この船に乗った時に……違う、ずっと願っていた夢は、『世界を自分の眼で見たい』
小さな島で暮らしていた私は、海に出るのが夢だった。
大きな広い世界に自分は小さいから、だから、世界を見たいとずっと思ってた。
ルフィ達に気に入られてこの船に乗ったけれど、彼等は強い。
力も、気持ちも。
その強さに落ち込んでいく自分もいる。
上辺だけの仲間じゃない彼等。
真剣に夢に、野望へと突き進む彼等に、私は、必要かな?
一人一人が持っている個性の中に、私は彼等に何を与えられているんだろう。
美味しい料理だって作れない。
危ない時に守る力だってない。
怪我をしたら手当てを出来る知識も無い。
ただ、歌を歌っているだけ、なんて―…無能、だよ。
歌なんて、誰でも歌えるし、夢だって、『世界を見たい』だなんて――――…。
眼の奥から込み上げるものに下唇を噛み締めて眼を閉じれば、背後で扉が開き、肩を揺らせて振り返った。