図書館1(小説)

□innocent love
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<若林side>

目が離せなくなったのは、いつからだろう。只の友人ではない、特別な相手だと感じたのは。
小学校時代から気になっていた。そして、岬が初めて俺を訪ねてきた時に、この感情の正体を知った。
同じベッドで眠る岬に欲情する自分の身体。
友人の振りを続けるのは、もう限界だった。
関係を先に進める事ができなければ、終わらせるしかない。
ウイスキーを喉の奥に流し込む。
あの時、俺は期待していたのかもしれない。岬が俺を引き止めてくれることを。俺を受け入れてくれることを。
実際、岬は何も言わなかったし、翌日部屋に戻ると岬の姿はなかった。その後に何の連絡もないし、俺からもしていない。
…後悔している。
傷つける位なら、離れたほうがいいと思った。望んだ通りの現実がやってきて、今、俺は深い後悔の底にいる。
…会いたい。
ちっとも酔えず、毎夜酒の量だけが増えていく。
…会いたい。
それだけでいいと切実に思った。会えるなら、真近でその笑顔が見れるなら、俺は…。
不意に携帯が鳴った。けだるく画面を開いた手が止まる。
メールの差出人は岬。
俺は何度も短い文面を読み返す。
たった一言。
『会いたい。』



三日後、玄関のドアを開けると、そこには岬が立っていた。
俺を見て、微かに微笑む。緊張しているのか、少しぎこちない。
俺は震える岬を優しくを抱き締めて、部屋の中に招き入れた。
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