□一夜
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さらさらとした茶色の髪が
激しく左右に揺れる

「…声、出せっ」

ベッドの軋みと
衣づれの音
時折洩れる
苦しげな荒い呼吸
それが返事の全て

俺に無理矢理
感じさせられてるお前の
最後の抵抗

愛おしすぎて
憎いとすら思う
噛み締めた奥歯の隙間から
本音が零れた

「お前が女だったらよかったのに」

睨み返す
燃えるような強い瞳

見惚れるほど綺麗な顔に
乱暴に口付けて
深く長く口付けて
暴れる身体を押さえ付け
ただ欲望の赴くまま
眼下の白い肢体を
貪り尽くしていく

ギリギリに追い詰められて
熱く熱く燃え上がる体
余裕なんて
どこにもありはしない

仰け反った白い顎
激しく上下する胸元
見開かれた目から
零れ落ちていく涙
悲鳴も吐息も飲み込み
噛み締める唇

一夜の夢の代償は
俺に向けられる笑顔と
培ってきた信頼関係

触れるほど、味わうほど
心も身体もお前を求めて
飢えていく

逃げる身体を
何度も引き寄せて
快楽と羞恥に震える
白い肢体を
容赦なく追い詰めた

お前の華奢な身体は
内面のプライドの高さを
支えきれるほど
強くはない

「呼吸しろ。」

声を出さないというのなら
せめて

痛みを逃がすために

「岬」

どうしようもなく
息があがる
頼む
本能が
完全に俺を支配する前に

ベッドが軋んだ

「――…力を、抜けっ」

お前をメチャクチャに
壊してしまう
その前に

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