バザール(企画、リクエスト等)

□小ネタ劇場3
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『お時間過ぎてまーす。延長しますかー?』
「…………」
明らかに場違いだと思われる明るい声が、受話器を持った俺を打ちのめした。
ああ、しまった、と思っても後の祭り。確かにベッドサイドの時計はこの部屋に入ってから二時間を越えている。
…反町を恨みたい。
岬に選ばせた部屋は一見普通の部屋だったが、壁と天井に鏡があって、岬が物凄く可愛い反応をした。
どう考えても無理だろ、二時間。
「岬、時間だって。延長し」
「じゃ、帰ろ。」
「…………は?」
にっこりと笑う麗しい恋人。
今、なんて言いましたか?
「休憩終わったんだから、帰ろうよ。あんまり待たせちゃ悪いよ。」
「いや、岬、待て。」
さっさと起き上がって服を着ようとする岬をかろうじて引き留めて、乱暴にならないように押し倒す。
「岬、…まだ終わってませんが。」
「え?…でも、休憩がどんなのかは解ったから、もういいよ。」
もういいって…。
電話が鳴るまでは、あんなに可愛かったのに。
どうしてお前はそんなに淡白なんだ。
『もしもし延長しないんですかー?』
あああぁ。俺はとってもしたい。
「ちょっと待ってくれ。」
早口で電話に答えて、岬に向き直る。
「…岬?…頼む、お願いします。もう少しだけ。」
俺の体は岬を求めて狂いそうになっている。
「でも、僕ちょっとお腹すいてきちゃった。」
無邪気そのもの、という見本が目の前にいる。
いつもより岬の反応が激しかったから、当然かもしれない。
速攻で叶えてやりたい。
「わかった。岬の好きな所に食いに行こう。…延長した後で。」
だが心と体は時に別物だ。
キスをしながら、岬の身体に優しく触れる。
「あ、駄目だって」
「まだ途中じゃないか?」
「駄目っ…時間が」
「岬?いいだろ?あと少しだけだから。な?」
「でも」
「……食事の後でアンドリューのエッグタルト。」
「…?」
「銀のぶどうの白らら。」
「…」
「パステルのなめらかプリン。千疋屋のフルーツゼリー。」
更に熱い攻防の末に、ようやく岬の同意を取り付ける。
「……延長します。」
二度とラブホテルには来るまいと心に誓いながら、電話を切った。



END
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