バザール(企画、リクエスト等)

□学園エンジェル
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「岬センセ。」
「若林くん、…そこは窓で、…入り口は向こうにあるんだけど?」
「こっちの方が近いんだよ。…あ、俺の名前覚えてくれたんだ?」
俺は気にせずに窓枠を乗り越えて、美術準備室に足を踏み入れた。
初めて入る。キョロキョロと辺りを見回した。
「…サボるのによさそうだとか考えてないよね?」
「…考えてた。」
「駄目だよ。ここ普段は鍵締めてるから。」
「じゃ、開いてたら岬センセがいるんだ?」
ついニヤニヤ笑ってしまう。
岬センセは溜め息をついた。
「だいたい何でそんなに自由に出歩いてるの。…授業は?」
「…サボり。」
「駄目だよ。授業に出なさい。」
「じゃあ岬センセがキスしてくれたら出ようかな。」
近寄ると、逃げられた。思わず舌打ち。
「俺、上手いぜ?」
「そういう問題じゃないでしょ?」
「何だよ。今日は紳士的に誘ってるのに。」



岬センセに会うのは、これが2回目。
最初はサボってる屋上で、バッタリ会った。
うちの学校は学ランなのにスーツ姿だったから、てっきり転校生だと勘違いした。
からかうつもりで近づいて、よく見たら好みの顔で、好都合だからこのままやっちまおうかと腕の関節を決めて身体の自由を奪う。
「抵抗すると折れるぜ?」
捕まえた獲物に笑いかけながら、服に手を伸ばして、唇を寄せた。
「わ、バカ、止めろ。」
躊躇のない力の入り具合に、本気で慌てたのは俺の方だ。
思わず力を緩めると、見事にするりと逃げられた。
「…離してくれてありがとう。」
離れた距離でそいつが微笑む。
唖然とした。
「よかった。折れたら、労災が効くかなって、ちょっと心配だったんだ。」
「…労災?」
「美術講師なんだよ、僕は。両利きだから、片方折れてもそんなに支障はないんだけど。」
名前を聞くと、岬だと名乗った。
名前を聞かれて、若林だと名乗った。
可愛い顔してるくせに、良い度胸してる。
かなり本気で自分のモノにしたくなった。



「…確かに、随分紳士的になったね。」
岬センセは笑う。
「武力行使は止めたの?」
「止めた。岬センセには意味なさそうだし。…なあ、何でも好きなもの買ってやるから、俺の家に来ないか?」
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