図書館2(小説)

□プレゼント
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「若林くんって、プレゼント魔だよね?」
唐突に岬がそう口を開いた。
「プレゼント魔?」
何だ、それは。
「僕が借りてる部屋のクローゼットの中、来る度に僕の服が増えてるんだけど。」
「…必要だろ?」
「自分の着替えくらい持参してるよ。」
「手ぶらで来ればいい。」
「そうじゃなくてね。」
「?」
何が不服なんだろうと俺は岬を見つめ返す。
サイズにしても好みにしても、岬に合わない服を揃えてはいないはずだ。
「…嫌、か?」
暫く考えた末に、俺から物を貰うこと自体が嫌なのかと思い付く。
岬は苦笑して、手元のマグカップをテーブルに置いた。
「嫌なんじゃないよ。そんな顔しないで。」
俺の頬に触れた岬の手を掴んで、唇を寄せる。
「若林くんは、きっといっぱい愛されて育ったんだね。」
「?…岬もだろ?」
問いかけると、岬はコクリと頷いて笑った。
「…ねぇ、そうだ。若林くんの子供の頃のクリスマスって、家に大きなクリスマスツリーがあった?」
岬はまた唐突に話題を変える。
「あったぜ。かなりでかいやつ。」
「クリスマスケーキとご馳走があって、プレゼントがあって。プレゼントの中身は若林くんの欲しいものだった?」
「欲しいものは普段から貰ってたから、クリスマスプレゼントは意外なものが多かったな。…サッカーの練習場とか。」
岬は笑う。
「僕ね」
笑いながら、俺に体重を預けてきた。
「実を言うと、そんなクリスマスを経験したことがないんだ。」
思わず岬を見つめた。
「……え?」
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