図書館2(小説)

□僕は君の宝物
1ページ/2ページ

若林くんはすぐに僕にキスをしてくる。
とっても嬉しそうに。
なんだか何かに似ているなと実はずっと思っていたのだけれど、それが何かにやっと気付いた。
若林くんは、犬に似ていると思う。
こうやってストレートに愛情表現するところとか、こちらの顔色を見て元気をなくすところとか、何に対しても一生懸命で、夢中になるところとか。
若林くんって犬を飼っていたっけ。飼い主はペットに似るって、そういえば聞いたことがある。
「…なんだ?」
くすくす笑いだした僕に若林くんが気付く。
「…若林くんってさ、僕が雪山で遭難しても、絶対捜し当てて助けてくれそうだなって思って。」
「…そりゃ勿論、命に替えても助けるぜ?」
若林くんは当然のようにそう答える。
…やっぱり似てる。
「それが何だ?」
「ううん。なんでもないんだ。」
「?」
不思議そうな顔が、なんだか可愛い。
「よしよし。」
頭を撫でてみた。かなりの大型犬だ。
「もしかして、僕のこと独り占めしたいと思ってない?」
若林くんは驚いた顔をした。
「…独り占めしてもいいのか?」
笑ってしまう。
穴を掘ってお気に入りを隠すんだよね。誰にも取られないように。
若林くんは軽く溜息をつく。
「無理だろ。お前は。誰の物にもならないくせに。」
「そんな事ないよ。」
自分からそっと唇を重ねた。
僕は臆病なだけ。
こうやって体だって預けてるのに、騙されない若林くんが結構好きだ。
だからこそ安心して傍にいられるんだよ。
押し倒された。
「じゃあ、俺の物になってみるか?」
直情的で素直な愛情表現。裏表がまるでなくて、解りやすいところも好きだ。
僕は若林くんを見上げて笑う。
「…どうやって?」
快楽だけじゃ、僕は捕まえられないよ。
「それを俺に教えてくれ。」
若林くんも笑って僕に口付ける。一瞬見つめあった後、それでも躊躇う事無く僕の首筋に顔を埋めた。
くすぐったい唇と舌の愛撫が、やがて気持ち良さに変わっていく。
服を解かれていく感覚に、僕はただ身を任せる。
教えられない。
僕も知らないから。
若林くんからもたらされる快楽に少しずつ飲み込まれていきながら、僕は静かに目を閉じる。
こんなに人を好きになったことはないから。
何もかもが初めて踏み入れる世界で、僕が僕のままでいられるのは、君のお陰。
僕は若林くんが思ってるよりずっと。
自分でも信じられないくらい。
「…んっ…」
君を。

「…岬…」
この熱くなった身体と同じくらい。

「…若…林くんっ…」
…君だけを求めてる。



END
次ページはアトガキとオマケ
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ