図書館4(小説)

□永遠の1/2
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痛みには耐えるくせに、快楽からは逃れようとする身体を抱き寄せる。
しっとりと汗ばんだ熱い肌と、不規則に早い呼吸。
時おり漏れる甘い吐息。
「…っ、…あっ」
苦しそうに歪む表情。
身体は俺の愛撫に反応し震えても、その両手は背後のシーツをきつく掴み、俺を求めて伸ばされる事は決してない。
「…そんなに嫌か?」
投げ出された両足を掴み、無理な態勢を強いながら、耳元で囁く。
「…俺に抱かれるのは。」
見下ろした岬は固く目を閉じ顔を背け、俺の言葉に肯定もしなければ否定もしなかった。
自虐的な笑みが漏れる。
どうして、こいつなんだと思う。
求めても求めても満たされない。
他に目を移せば、俺のために全てを投げ出してくる奴は山ほどいるというのに。
それなのに、どうしてこの岬じゃないといけないのだろう。
ゆっくりと体重をかけていくと、岬が苦しげに声にならない息を吐く。
初めての時は奪った。そして二度目も。
三度目の今も、まだ奪わなければ、手に入らない。
好きだと告白したら微笑んでくれた岬。
だがその淡い微笑みは、抱き締めて口付けた途端に、跡形もなく消えてしまった。
だから、もう、言わない。
今更引き返す事など到底不可能で、後は勢いに任せてただ奪うしかなかった。
俺はもうこんな卑怯な手でしか岬を手に入れることができない。
限界まで腰を進めて、逃げないよう肩を押さえつけていた手を岬の腕に沿って滑らす。
シーツを掴んでいた岬の手を無理矢理開かせ、指を絡めるように握りしめてシーツに押し付けた。
浅い呼吸を繰り返す岬を見下ろす。
苦しくて堪らない。心も、身体も。
どうして。誰もこいつの代わりにはならない。
強引に身体を繋げたもののそのまま動かない俺を不審に思ったのか、やがて岬がうっすらと目を開け、俺を見上げた。
苦しげに潤んだ揺れる瞳。
目が合った途端、岬はすぐにまた視線を反らした。
早く終わればいいと思ってるだろうか。
早く始めてほしいと思ってるだろうか。
怒ってるだろうか。憎んでるだろうか。それとも諦めてるのだろうか。
それなのに。こんなにも、俺は。
声が。聞きたい。どこまでも甘く、濡れた。岬の。高く、かすれた。
繋がった身体を動かさないように注意して、焦らすように口付けた。
「…みさき…」
何度も。何度も唇を重ねた。奪うように。乞うように。
せめて、このまま繋がっていたい。一秒でも長く。
口中を舌で辿り、逃げる舌を絡ませ、優しく吸い上げる。唇で。舌で。優しく、優しく、激しく。岬を味わう。強く。
身体の奥が熱い。
血流が沸騰し、身体中の熱が渦巻いて一点に集中し、岬を求め脈打つ。
抑えようもなく呼吸が荒くなる。自分のか岬のか分からない吐き出された吐息に苦しさと甘さが混じる。
繋がった下半身で本能のままに岬を揺らした。
唇を離すと、岬は首をのけぞらせ、俺が動く度に細い悲鳴のような高い声が断続的に漏れた。
その悲鳴すら愛しくてまた唇を塞ぐ。
岬が顔を振って抗う。追いかける。濡れた唇を更に濡らす。
軋むベッド。肌を伝う汗。激しくなる音。悲鳴。鼓動。
握り込んだ俺の手の中で、岬の細い指が幾度となく痙攣したようにピクリと動き、やがて同じ力で強く握りしめられる。
吐息。悲鳴。切なげにかすれた。高く。甘い。
「……あっ…わか…ばやしくんっ…」
甘い、甘過ぎる、その声。
震える岬の指に優しく口付け、悲鳴を上げ続ける岬を包み込むように更に深く抱き締めて、それからはもう理性を捨てて動いた。


意識を手放して眠る岬の隣に横たわる。
「…岬」
そっと囁いて、起こさないように注意深く抱き寄せた。
三度目だ。これで。
一度奪えば、満足すると思っていた。
逆だった。奪うほどに欲しくなる。満たされない飢えは激しくなる。
身体だけでは足りない。心ごと、魂ごと欲しくなる。
「…好きだ。」
穏やかな寝息。このままずっと見ていたいと思う。今はただ安らかな寝顔。
「好きだ、岬…」
乱れた髪を直してやり、額にそっと口付ける。
「…ん…」
眠る岬が小さく身じろぎして、ほんの僅か、俺の方に身を寄せた。



END
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