図書館4(小説)

□合宿の罰ゲーム
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カシャン。カシャン。
冷たい金属音が2回響いた。
「罰ゲームだからね。明日の朝まで、このままでいてもらうよ。ちなみに鍵は僕が持ってる。」
三杉くんは小さな鍵を取り出して僕達二人に見せると、それをまた自分のポケットにしまって笑った。
合宿中の三杉くん主催のレクリエーション。
飲めや歌えやの大騒ぎの余興のゲームで、脱落者が片っ端から罰ゲームの餌食にされていた。
グランドを走る、腕立て伏せをするなどは良い方で、一発芸を見せる、好きな子を暴露する、嫌いな食べ物を食べさせられるなど、用意された罰ゲームはだんだんと悪質になっていくみたいだった。
そして僕も。
「…そういうことか。」
鍵を見つめていた隣の若林くんが、三杉くんを睨む。
「そういう事だよ。若林くん。」
三杉くんは睨みつけてくる若林くんなど意に介した風もなく、逆に意味深に笑いかけ、僕には柔らかな微笑みを見せる。
「という訳だ、岬くん。寝てる間に若林くんに潰されないことを祈るよ。」
「え」
「するかよっ。」
荒々しい若林くんの言葉と共に、カチャリと金属音が響く。
「わっ」
若林くんの左手の動きに引っ張られて、僕の右手が持ち上がる。
若林くんの舌打ち。
「悪い、岬。」
「いいよ、平気。」
「そうそう、気を付けるんだね、二人とも。手錠で繋がってるのを忘れないように。」
三杉くんは楽しそうに笑って、ゲームの喧騒の中に戻っていく。
僕達にかかる野次とはやしたてる声。
手錠で繋がれたまま残された僕達。
若林くんの左手と僕の右手。
「………」
遠くで反町がリンボーダンスに挑戦している。
女装の高杉くんが傍を通り過ぎる。
ランバダを踊る早田くんがいる。
「…手錠で良かった。」
三杉くんが去った後で思わず呟くと、若林くんは驚いたように僕を見る。
「相手が俺でもか?」
「若林くんだからだよ。」
笑いかけると、若林くんは一瞬苦虫を噛み潰したような顔して僕から視線を外した。
「…それはどうだかわからないぞ。何しろ俺は罰ゲームのネタだからな。」
僕の罰ゲームは、若林くんと手錠で繋がれて一晩過ごす事。
不機嫌さを隠さない声がおかしくて、僕はもう一度笑ってしまった。
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