図書館3(小説)

□恋愛パラドックス
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「何でそんなに幸せそうに笑ってるの?」
ベッドに降ろされた。
目の前の若林くんはとても幸せそうな顔をしている。
だから聞いてみたのに。
「岬が幸せそうだから。」
笑いながらキスをされた。
「え?…それは、若林くんが凄く幸せそうだからだよ。」
まず唇に。
「いや岬が先だろ?」
それから頬に。
「ううん。若林くんの方が先だよ。」
鼻の頭に。
まるで卵が先か鶏が先かのパラドックスみたいな会話になる。
言い合いながらも、キスの雨は止まらない。
僕の最愛の恋人は滅多に会えない相手。
でも、今はこうして触れ合える程、近くにいられる。
それだけで何より嬉しい。
とても幸せそうな顔で見下ろされた。
「岬の方が幸せそうな顔してるぞ。」
「………」
もう。
そんなの当たり前じゃないか。大好きな人にそんな風に笑いかけられたら。
「…うん。幸せだよ。」
笑いながら降参したら、更に優しい笑顔に変わった。
「ん。俺もだ。」
キス。
目尻に、額に、耳に。首筋に。
さっきよりも優しく。ほんの少しだけ長く。
髪の毛がくすぐったい。
「…ね。」
「ん?」
「今夜は何もしないって言わなかった?」
「言った。」
「…されてる気がするんだけど…?」
「まだ、してない。これはおやすみのキス。」
思わずクスクスと笑ってしまう。
若林くんらしいね。
「まだ?…じゃあ、これからするってこと?」
若林くんはキスを止めて、僕を見下ろす。
優しい笑顔。
「そりゃあ岬が望むなら。」
「ううん。僕はこのままでいいよ。」
別に肌を重ねなくても。この優しいキスだけで。
充分、君を感じることができるから。
「本当か?」
「本当だって。」
「試してみる?」
苦笑した。
「もう。そんなことしたら、もたなくなるのは若林くんの方だよ?」
「岬だろ?」
何でこんなに自信満々なんだろう。
「若林くん、だよ。」
「いや、岬の方だって。」
優しいキス。
お互いの名前を呼び合いながら。
ゆっくりと。存在を確かめるように。あらゆる場所に唇が触れてくる。
触れてるだけなのに。熱くて。
蕩けそうなほど、甘くて。
「…ん…」
パラドックス。
「…どうした?…俺が欲しくなったか?」
低く熱く耳を擽る囁き。
目の前には若林くんの幸せそうな笑顔。
「…岬、言って?」
愛しくて、大好きで、もっと深く、もっと長く感じ合いたいと。その優しい笑顔から伝わってくる。
どちらが先かは解らない。
「…若…林くん…」
でも今、きっと僕も同じ表情で、大好きな若林くんを見上げている。



END
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