図書館1(小説)

□恋愛の方程式
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出会ったのは三年前。
しかも他校に転校してきた岬と会えたのは、サッカーの練習時と試合の間、それから二人で過ごしたわずかな時間だけ。
ほんの数か月の更に何十分の一。
それでも俺は忘れた事などなかった。
その面影を、声を、笑顔を。
類い稀なサッカーセンス。抜群の身体能力。優しげな外見の奥に秘められた、何者にも負けない強さ。
そして、岬からの告白と、さよならのキスを。



「若林くん!」
はっきりとした、よく通るテノールの声が響いた。
紛れもなく自分に向けられた声だという事と、それが日本語だった事に俺は驚いて、声の主を探す。
更に言えば、俺を「若林くん」と呼ぶ人間は数える程しかいない。
花のような笑顔がそこにあった。
一瞬自分の目を疑う。
「岬!?」
三年前そのままの笑顔で、岬が俺を見つめていた。
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