図書館1(小説)

□プライベートな事情
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「…っあ…んっ…ゃあっ…あっ…」
耳を擽る甘い悲鳴に誘われ、うっすらと汗ばんだ白い肢体を更に追い詰めた。
限界が近い岬の身体は、激しく反応を返してくる。
今はもう俺に翻弄されるまま、腕の中で狂おしく鳴き続けているだけだ。
可愛いくて堪らない。
「…ぁ…あんっ…はぁっ…あっ…ぁ」
いつもならこのまま岬を楽にしてやるんだが。
俺はわざと岬から手を離した。
「……ぇ?」
突然途絶えた愛撫に驚いたのか、はぁはぁと激しく酸素を求めながら、岬は俺を潤んだ目で見つめた。
岬のその表情だけで、いきそうになる。
「…岬?」
何事もないかのように笑ってみせた。
岬は荒い呼吸を繰り返しながら、苦しそうに俺を見上げる。
苦しくないわけがない。こんな状態で放置されたら。
「辛いか?」
微かに岬が頷く。お互いの視線は絡み合ったままだ。
「すぐに楽にしてやるよ、何をして欲しいか言ってくれれば。」
「…!」
「言わないとずっとこのままだぜ。」
うっすらと笑みを浮かべながら、羞恥に赤く染まった岬を見下ろす。
岬の言葉で俺を求めてほしい。どんな言葉でも構わない。
「…どうしてほしい?」
岬は苦しそうに眉根を寄せ、何度か口を開きかけた。しかし、やがてゆっくりと視線を逸らす。
沈黙。
岬はただ呼吸を整えていて、今度は俺が放置された。

…………あれ?
「…みさき?」
恐る恐る呼び掛けても反応なし。
あ、やばい。
この反応の無さはやばい。
「岬?どうした?こっち向いて」
「…いらない。」
何が?
………俺が?
「ごめん、岬。嫌だったか?悪かったって。」
腕の中の身体は、俺を拒む。必死に謝りながら、冷えていく岬の体を抱き締めた。
怒らせた?困らせた?嫌われた?
よくわからない。
岬はたまに俺の理解を越えた反応をする。何が原因かがわからないので、対処できない。
とりあえず、続きができる状態ではないという事だけがわかった。
「岬、ごめん。機嫌直してくれって。な?もう変な事言わないから。」
仲直りのキスをしようとしたら、それすら拒まれる。
が――ん。俺は一体どーすればいいんですか。岬さん。
「岬、ごめんなさい。岬?せめて返事してくれ。謝るから。岬ぃ?」



「で、何があったんだよ。このざるキーパーが。」
悪態をつきながら隣のベンチに腰を降ろした人物を、俺は見つめる。
「ヘフナー。」
今日俺は練習の途中でシュナイダーに叩きだされた。
『帰れ。』
冷たい一瞥と一言だけ。
「お前がそんなに腑抜けになるなんて、どうせ理由はミサキだろ?」
図星。
「話くらい聞くぜ?」
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