図書館1(小説)

□天使の真顔
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俺の言葉を聞いた瞬間、岬はきょとんと俺を見つめ返した。
言うべき事を言い切った俺は、黙って岬の次の反応を待つ。
二人しかいない室内には、気持ちの良い午後の日差しが降り注いでいた。
やがて岬はにっこりと笑った。
「僕も若林くんが好きだよ。翼くんも松山も小次郎もみんな大好き。」
俺は言葉を失う。
俺のストレートな告白に返ってきたのは、いつも通りの笑顔。
愛情を友情にすり替えて、まるで何事もなかったかのように。
岬は気付いていないのだろうか?
気付かない振りをしているのだろうか?
もし俺の本心に気付いているなら、これは残酷な拒絶だ。
そうではないなら、どうやってこの思いを伝えればいいのだろう。
「・・岬・・・俺は」
体が勝手に動いた。
岬の髪がふわりと俺の頬を撫で、床に広がる。
気が付くと岬を押し倒し、両手首を押さえ付けていた。
腕の中の、身動きのできない最愛の人を見下ろす。
不意に今まで押さえてきた激情が溢れ出して止まらなくなる。
「・・っ・・!」
理性が切れる最後の瞬間に俺が見たものは。

愛らしく美しい
天使の真顔。



END

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