図書館1(小説)

□恋愛の方程式
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「岬。」
俺は慌てて岬に走り寄った。そのまま立ち尽くす。目の前の岬に、三年分、大人になった岬に、俺は再び恋に落ちる。
岬の出現はいつだって突然で、俺の思惑などお構いなしだ。
言葉が出ない。
「若林くんに会いに来たんだ。」
そういって岬がにっこりと笑う。
その愛らしい笑顔は、ちっとも変わっていない。目眩を感じて、俺は岬を抱き寄せる。
「…会いたかった。岬。」
腕の中の岬をきつく抱き締めた。どれほど長い時間、この時を待っていただろう。
「…うん。僕も。」
密やかに甘く囁く声が、静かに俺の耳に忍び込んだ。


「若林くん、全然変わらないね。」
「そうか?」
何事もないかのように笑みを返しながら、俺は自覚していた。
変わった。
あの時とは全然違う。
その髪に触れたい。
身動きできないほど、きつく抱き締めたい。
可愛い唇を塞いで、俺の名前と甘い喘ぎ声しか出せなくなるようにしてやりたい。
俺は目を細める。
「好きだよ、岬。」
こうして見つめているだけで、堪らなく岬が欲しくなる。
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