性悪女の夢物語

□性悪女の夢物語9
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犬は水を跳ねるように骸様の方へ走った。


しかし、犬が骸様に抱きつこうとした瞬間、実現化が解かれた。


『なっ!』


そのせいで、犬の手は私の胸を掴み押し倒した。


バシャン


私と犬は向かい合う形になり、倒れた。


『何するのよ!』


思わず、真正面にある犬の顔を平手打ちした。


怒るかと思ったが動揺しているらしく、あたふたしている。


その様子に私は少し落ち着き、ようやく幻術が解かれている事に気が付いた。


『どきなさいよ』


その言葉に、犬は自分の態勢に気付いたらしい。
はたからみれば、犬が私を襲っているような態勢であると。


慌てて犬は立ち上がった。

『で、いったい何のようなの?』


私は立ち上がりながら聞いた。


今だに冷静になれない犬はあ、とか、えっ、とかよく分からない単語を言うばかりで話にならない。


「何でお前俺達の居場所がわかったびょん!」


少しどもりながら言った。

『あんたを追ったからに決まってるじゃない』


「やっぱりお前…」


なぜか犬は襲い掛かってきた。


ヤバイ!


思わず眼を閉じるが痛みは来ない。
ゆっくり眼を開けると犬のお腹に三叉の槍が刺さっていた。
犬の後ろに千種がいた。

『どうして?』


倒れる犬を支えながら千種に尋ねた。


「骸様の器が死んだら困るから」


『だから犬を殺したの?』

「殺してない。精神世界に行っただけ。起きたら全て理解してる」


『そう』


なぜ千種が私の事を知っているか分からないがまあいい。
おそらく、これが骸様の策だろう。

『私の名前はクローム、クローム髑髏。貴方の言う通り、私は骸様の器よ』

「柿本千種」


話している内に犬に刺さっていた三叉槍は消え、私の手に納まっていた。
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